野生動物のテリトリーが年々減少傾向にある中、行き場やエサをなくした彼らは、食べ物等の匂いに誘われて人間の近くにやってくる。実際、山中でのキャンプ中にイノシシやクマに遭遇し、肝を冷やしたキャンパーもいるのではないだろうか。筆者もその中の一人で、クマに遭遇したことがある。
遭遇したのはアメリカのカリフォルニア州、家族と現地の友人でキャンプをしたときのことだ。アメリカ人で玄人キャンパーでもある友人から「あそこはクマが多いから、45口径の拳銃をいつも持っていく」とは聞いてはいたが、「まさか、本当に遭遇はしないだろう」と高を括っていた。
その晩、夕飯をすましテント内で寝支度をしていた所、草木のガサガサという音と動物の唸り声、友人の怒鳴り声が聞こえた。慌ててテントから出ると、友人の足元には銀色の小さなスーツケースが転がっており、その手には銃が構えられていた。
きっと突然の出来事で、慌てて拳銃を出したのだろう。何が起きているのか分からない私に両親は「クマが出たらしい」と教えてくれた。
時間帯は20時~21時ごろ、空はまだほんのりと明るかったが、木々に囲まれたキャンプ場は真っ暗だ。明るいのは焚き火の周りだけで、筆者は実際にクマを目で見ることは出来なかったが、友人が真剣な表情で拳銃を構えていたことは覚えている。
あの真っ暗な暗闇の先にクマがいた、という恐怖心は今でも忘れない。今考えてみると、あのキャンプ場に私たち以外のグループが居なかったのは、クマの繁殖期である7月だったからなのかもしれない。暗かったので確実ではないが、クマの種類はグリズリーだと思われる。
州旗のデザインにグリズリーが使われるほどなので、カリフォルニアに住んでいる人々とって身近なクマだ。その分、遭遇率も高いのだろう。友人が対策として、わざわざ拳銃を持っていたのは大袈裟な事ではないと実感した。
その後も緊張感は薄れなかったが、場所が開けた安全ルートから帰り、何事もなく山を下りることができた。
この体験を読んだ方は「遠いアメリカだし、日本でキャンプする分には大丈夫だろう」と思っていないだろうか。しかし、日本全国でのクマの捕獲数は10年で2倍に増えており、近年ではキャンプをする際、クマや野生動物への対策意識が必然的になっている。
幸いなことに、筆者の場合はケガや被害には至らなかった。しかし、自分は大丈夫だと思いこみ、対策意識が薄かった事は事実だ。もう少し何か対策が出来たのではないかと後悔している。
玄人キャンパーの場合でも、野生動物と遭遇したり、被害にあった場合「もう少し用心しておけば……」と後悔したりすることもあるのではないだろうか。
また、キャンプ初心者で「具体的にどう気をつければいいのかわからない」という方、アウトドア女子でもある筆者のように「もし、女一人でのキャンプで危険な野生動物に遭遇したら」と悩んでいる方も多いのではないだろうか。
そんな方に向け、対策意識の大切さを身をもって実感した筆者が、野生動物に対して具体的にどう対策すればいいのか解説していく。男女関係なく意識できる対策法なので、アウトドア女子の方々にもおすすめだ。
■事前の情報収集が大切
野生動物への対策として最も大切なのは、事前の情報収集ではないだろうか。もし野生動物と出くわし、被害にあった最悪の場合を想像すると「知らなかった」では済まないだろう。
特に、近年本州ではツキノワグマの出現が増加傾向にある。京都府で19年ぶり、兵庫県で3年ぶりに狩猟解禁にもなるほど目撃情報や被害数が多い。
参考URL:https://www.asahi.com/sp/articles/ASR1872TPQDFPLZB017.html
参考URL:https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20221122/2020020229.html
クマやイノシシなどの、身の危険性が高いと言われる野生動物のイメージが少ない都道府県でも、最新の目撃情報や被害数などの「事前の情報収集は必須」という認識を決して忘れないでほしい。
また、クマ除け鈴などの軽いケモノ対策グッズから、ワンタッチで大音量が出る電子音スティック、ホイッスル、クマ除けスプレーなど、自身のキャンプスタイルや予算に合わせたグッズを一つでも持っておくのをおすすめする。
また、クマの気が立っている5月~7月の繁殖期、冬眠から明けて行動を開始する4月~5月の期間、冬眠に向けて食いだめをする9月~10月の期間などは被害が多い。
しかし、期間はあくまでも参考程度で地域性や個体差があるため、「今は時期ではないから大丈夫」と気を抜くのは絶対NGだ。