■呼ばれた人だけがたどり着ける「屋久島の縄文杉」とは?

 雨が多く年間を通じて温暖である特殊な気候により、世界的にも珍しい植物や生き物が生息する鹿児島県屋久島は、アニメ映画「もののけ姫」のモデルになったともいわれ、世界自然遺産に登録されている地域だ。特に樹齢2170〜7200年と推測される縄文杉は、一生に一度は見たいという人が多い。

 しかし屋久島の縄文杉はおいそれとはお目にかかれない。その理由は単に距離が遠いからではない。「運」が必要だからだ。

 鹿児島と屋久島を結ぶ飛行機や高速船は欠航になることが多い。「屋久島は、1ヵ月に35日雨が降る」と言われるほど天気が悪く、加えて台風の通り道であるため海が荒れやすい。海の便・空の便共に欠航は珍しいことではない。

 実際に筆者が屋久島を訪れた時も、行きは飛行機が欠航になり、帰りはフェリーが本数を減らしての運航だった。

雨の屋久島の船着場(撮影:坪井 千晶)

 島に渡る手段の飛行機や船は、予約で満席になることが多い。欠航便が出ると他の便へ振替が難しく、島を目前にして引き返したという話はよく耳にする。

 オフシーズンでも欠航の翌日などに日程変更が必要なため、弾丸旅行を予定した場合は、屋久島に行っても時間が足りず縄文杉を見られないだろう。

 島に渡った後も、屋久島最大級の縄文杉までは、登山口から往復10時間ほどのトレッキングが必要だ。

 運だけでも体力だけでもたどり着けない。まさに運と体力を併せ持つ人だけが「巨大な縄文杉」を見ることが許される。