■縄文杉が見られなくなるって、ほんと?

大きく育った屋久杉(撮影:坪井 千晶)

 縄文杉は、発見された当時(1966年)その長寿ぶりがニュースに取り上げられるほどだった。存在自体が珍しく樹齢を考えるといつ倒れてもおかしくない状態にある。

 特に日本は災害大国だ。屋久島は台風の通り道でもあるため、暴風によってなぎ倒される木も多い。

 トルコで大きな地震があったように、日本にもいつ大きな地震が来るか分からない。屋久島付近で大きな台風や地震が来れば、縄文杉も立っていられないかもしれない。いつまでもあるものだと思い、先送りにしていたら二度と見られなくなる可能性がある。

樹齢2170〜7200年と言われる縄文杉(撮影:坪井 千晶)

■初心者でも行ける? トレッキングの注意点

 縄文杉へは、長距離の登山となるので全くの登山初心者には難しいが、屋久島にはいくつかトレッキングコースがあり、初心者でも楽しめるものもある。

 縄文杉を見たいのであれば、事前に山歩きの経験をつみ体力をつけることが必要だ。どのコースを歩く場合でも、準備を怠ると途中リタイアや怪我など危険を伴うことも知っていて欲しい。

 縄文杉までの登山道は、高尾山や摩耶山といった本州の初心者向けの低山と同様、整備されていて歩きやすいのだが、距離が長い。そこで、注意して欲しいのは、靴と水分と補給食だ。

不思議な雰囲気のある屋久島の森(撮影:坪井 千晶)

 屋久島の森は雨が多く湿度が高いため、苔が多く生息している。また、登山道は雨で濡れると非常に滑りやすい。

屋久島の特徴である木々を覆う苔(撮影:坪井 千晶)

 行程の多くがトロッコの線路で、山道は階段と整備された通路。いくら整備されているとはいえ、足を滑らせて滑落すると大怪我の可能性もある。そうなればせっかくの旅行も台無しだ。

 そのため、溝は深めで、Vibramソールなど滑りにくくグリップ力のある登山靴を用意して欲しい。種類はミドルカットがおすすめ。ハイカットは足首が固定されて安定するが、行程前半の長いトロッコ道で足が疲れやすい。またローカットは、トロッコ道を楽に歩けるが後半の登りで足を挫くリスクがある。

 縄文杉までの山道はほとんどが板張りのため、硬すぎるソールだと足が疲れてしまうので注意してほしい。

 靴選びは、個人の筋力によっても違いが出る。初めて購入するときは、登山靴売り場のスタッフに相談し、靴ひもの締め方と一緒に教えてもらおう。購入した登山靴はあらかじめ低山などで試して、靴擦れしないように慣らしておく必要がある。

 縄文杉への往復10時間の道の途中に、食事処や水分を補給できる茶屋や山小屋はない。コースの途中、数ヵ所に沢水が流れる給水スポットがある。これらを利用する場合はボトルの準備をおすすめする。

 事前に用意する水分は500ml〜1000mlがよいだろう。水だけを多く取りすぎるとバテやすく10時間の行程を歩ききれないので補食も必要だ。

屋久島の山間部の風景(撮影:坪井 千晶)

 食事は、お弁当を持っていく人がほとんどだが、それだけでは不十分。普段の活動よりカロリー消費の激しい登山で、エネルギーが不足し低血糖で動けなくなるケースがあるのでチョコレートやナッツなど高カロリーでかさばらないものを用意しておこう。

 また雨具は必需品だ。上下セパレートのレインウェアの準備も忘れずに。傘は手がふさがるので危険。ポンチョタイプのカッパは端を木に引っ掛けてしまう可能性があるので避けよう。

 そのほかヘッドライトや救急セット、遭難への備えといったアイテムが必要となるが、長時間の山歩きを含め登山経験の少ない方は、ガイド付きツアーに参加してほしい。

携帯トイレ用テントブースと携帯トイレの説明看板(撮影:坪井 千晶)

 登山中のトイレは、登山道入口に1ヵ所と道中はバイオトイレが2ヵ所のみある。他に携帯トイレを使えるブースが複数用意されている。携帯トイレは島内で入手できるので、あらかじめ購入しておこう。