アルプス山脈の最高峰モンブランを中心に、フランス、イタリア、スイスにまたがって連なるモンブラン山系の山々には、子どももビギナーも楽しめる軽めのハイキングコースから、アイゼンで氷河を登って頂上を目指すプロ向けのコースまで、素晴らしいトレッキング・コースが無数にある。

 クールマイユールの観光案内所や山用品の店には地元の山に詳しいガイドやプロの登山家がたくさんいるので、コースへ足を踏み入れる前にプロのアドバイスをタダで受けられるのも嬉しい。どんなに山に慣れている人でも、油断は禁物。地元の情報は地元の人から得るのが一番安全で確実である。

 クールマイユールに滞在中、たくさんの地元の人々に教えてもらった魅力的なコースをいくつか歩いた。毎日異なる登山コースを歩いて足を慣らし、本格的な2日がかりのコースにも挑戦した。全ての行程は書ききれないので、モンブラン歩きのハイライトをいくつかピックアップしてご紹介しよう。

■TMB(トゥール・ドゥ・モンブラン)

 クールマイユールを始めとするモンブランの麓の街、また山中のトレッキングコースには必ずコースのポイントを示す黄色い看板が随所に設置されている。世界中、どの山へ行ってもお目にかかる標識だが、ヴァッレ・ダオスタで私が驚いたのはそのコースの数である。東西南北、どこを拠点にしても30〜40コースの選択肢があり、メインの交差地点ではその数は100を超える。モンブラン山脈がいかに広大であるか、この標識一つでわかるというものだ。

 実は山歩きの初日、街でこの看板を見て「足慣らしだから短時間のコースに行きたい!」と言い張った私は、後で大変な目にあうことになった。地元民もオススメしてくれたコースで、「大丈夫、子どもでも歩けるよ」と言われて安心していたのだが、問題は標高差だ。

 短時間でモンブランの頂上を見渡せる地点まで行けるということは、それだけコースの高低差が大きいということ。片道2時間と聞いて喜んで歩き始めたのだが、その2時間がひたすら急な登りで、帰路の下りはさらにキツい。その夜は足がガクガクでシャワーを浴びるや否やベッドに倒れこんでしまった。翌日から筋肉痛に悩まされたのは言うまでもない。

トレッキング・コースを示す標識。立っている地点からどの方角へ、どれくらい歩けば目的地に着けるかがわかる。但し、標高差は書かれていないので要注意
アルプスは広大で、地図に書かれていない道に遭遇することもある。道中“TMB”の目印をマークしていけば、コースを外れていないかどうかがわかる。