私の就く金融の仕事は、なかなか心休まる時がない。マーケットは24時間眠らないし、いつ何時世界のどこで政治的、経済的な事件が起きるかもわからない。顧客の売り買いのオーダーは時と場所を選んではくれないし、昼休みに席を外すのさえはばかられるほどだ。毎週どこかしらで日本やアメリカ、ヨーロッパの金融イベントがあり、それを受けて市場が大きく変動することが多々あるので、休みをとるにもカレンダーとにらめっこしなければならない。

 そんな働き方をする私は読書が好きで、仕事と遊びについて大きく2つの考え方を本から学んできた。

 1つは、仕事に時間もエネルギーも全投入する働き方。休む間も惜しむくらいハードに働き続けることで、充実感を得ることができるというもの。もう1つは、仕事は仕事と割り切り、趣味や余暇に自分の存在意義を見出す考え方。しかし、私はその両極端などちらの考え方も腑に落ちなかった。

 やりたいことは、たくさんある。だからといって仕事の手を抜くことはできないし、スパッと割り切ることもできそうにない。では、どうすれば、仕事も遊びも全力投球するライフスタイルを実現できるだろう。

■思い切って有給を使い、大型連休をとってみた

ずっと聴いてみたかったバリ島の伝統音楽「ケチャ」。男性が声だけを使って旋律を奏でる、声のオーケストラ

 そんな時にたまたま読んだのが、四角大輔さんの本だった。現在は移住したニュージーランドに暮している方だが、元はレコード会社で売れっ子アーティストをプロデュースする超多忙なビジネスマンだったそう。その一方で、きちんと余暇の時間を作り、登山やフライフィッシングの世界でも活躍していた。

 本に書かれていたことで私が実践してみたのは、「月曜日から金曜日までを連続で有休にし、前後の土日と合わせて9連休を取得してみる」ことだった。当然、周囲からは白い目で見られたが、「家庭の事情で」とか「どうしても僕がいないとダメな集まりがあって」などと言い訳をし、休みを死守した。

海に浮かぶように建つタナロット寺院では、息を呑むようなサンセットを見ることができる

 実行してみてわかったのは、休みをとる意思が固いことがわかると、相手は理由についてそこまで深掘りしてこない、ということだ。ちなみに、四角さんは、「そこは前々から決まっている別件がありまして…」という万能のフレーズを使っていたらしい。

 結果、私は9連休を使って、学生時代以来、長いこと行けていなかった海外旅行に行くことができた。前々から行きたかったバリ島の田園風景や大好きな民族音楽、美味しいエスニック料理に触れ、あらためて仕事も休みも充実させることの大切さを痛感した。

 以来、毎年連休を取得し、海外旅行に出かけるようにしてきた。