■イタリアの山の味覚

 日本でハイキング、山歩きのお弁当と言えば「おにぎり」が定番だが、イタリアの山歩きのお弁当はどうすればいいのか? メインのトレッキング・コースには街のレストラン顔負けの料理を提供してくれる「Rifugio(リフージョ/山小屋)」がいくつもあるが、ランチタイム丁度にそこへたどり着けるかどうかはわからない。

 万が一を考えて、水と食料を持っていくのは当然のことで、私たちもコースへ足を踏み入れる前に食料の調達をどこでするかに頭を悩ませた。というのも、長いコースを歩くには夜明けとともに出発しなければならず、その時間帯にはパン屋もスーパーマーケットも閉まっているからだ。

 しかし、街の食材店やパン屋の営業時間を事前にチェックし、ホテルの冷蔵庫のスペースと相談しながら翌日のランチを確保するうち、この地方ならではの食材をいろいろ発見することができた。その一つが、ヴァッレ・ダオスタ州特産のサラミ「モチェッタ」である。

 豚肉、牛肉、カモシカやエゾシカの赤身肉をニンニク、ローリエ、ローズマリーやたくさんのアルプスのハーブで味付けして乾燥させたサラミは、日持ちするうえ軽くて持ち歩くのにとても便利。必要なカロリーを手早く摂取できるだけでなく、味も絶品である。モチェッタの存在を知って以来、我々の山登りのランチは「モチェッタ、チーズ、パン」が定番になった。

山小屋で食べられるメニューの一部、「ソーセージの煮込みポレンタ添え」。素朴な山の家庭料理だが、味は街の有名レストランも脱帽するほど
山のお弁当の定番、ヴァッレ・ダオスタ特産のサラミ「モチェッタ」。見かけはただの干し肉だが、噛んだ瞬間思わず笑顔がこぼれる美味しさ