■平安時代から続く「戸隠そば」と「戸隠神社」の関係

ぼっち盛りが特徴的な戸隠そば(写真提供:一般社団法人 戸隠観光協会)

 岩手県の「わんこそば」、島根県の「出雲そば(いずもそば)」とともに、日本三大そばの一つとされている「戸隠そば」。

 最も有名な「ぼっち盛り」は、一口程度の量を束ね、5つないしは6つの束を円形の竹ざるに並べる盛り方。他にも、水はほとんど切らずに出し、薬味には地元の戸隠大根と呼ばれる、辛味大根の大根おろしを提供するといった特徴もある。

 地元住民にも深く愛されている戸隠のそばの歴史はとても古い。はじまりは平安時代。  山岳信仰の栄えた戸隠では、修行僧たちの携行食料としてそば粉が持ち歩かれていた。当時の「そば」は現在のものとは違い、湯でそば粉をこねた「そばがき」や「そば餅」が一般的だった。

 現在よく見られる、そば粉の生地を麺状に切った、一般的なそばのスタイル「そばきり」 になったのは江戸時代。先進的な蕎麦打ちの技術を誇っていた寛永寺(かんえいじ)から「そばきり」の技が戸隠神社(当時の名は戸隠山顕光寺)に伝えられたという記録がある。

 戸隠でも、お寺や神社の宿泊施設、宿坊に訪れる人々に振る舞うおもてなし料理として「そばきり」が広がり、今では「戸隠そば」として定着した。

 戸隠とは切っても切れない縁の「戸隠そば」、訪れた際はぜひ味わってほしい。特に戸隠神社と戸隠そばのセットは、江戸時代に戸隠へ訪れていた参拝者たちと同じような気分を味わえるだろう。もちろん揚げたての山菜天ぷらもお忘れなく。

 戸隠とそばの密接な関係を知った今なら、さらに味わい深いものとなるだろう。

※この記事の情報は2023年3月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。