■枯れ木に白い葉を生い茂らせた「樹氷」

雪に包まれ真っ白になった樹氷(撮影:仲地宏樹)

 世界的に見ても、樹氷はとてもレアな現象。日本の他にドイツでしか見られないくらい希少なものだ。占冠村には「星野リゾートトマム スキー場」があり、ゴンドラで山頂近くまで上ると、斜面に並び立つ樹氷が見られる。

 樹氷は、氷点下以下の水の粒が樹木にぶつかることで凍ってくっつき、薄い氷の層を作り出す現象。層が薄いものから、大きな雪の塊にまで育つものまである。

 なかでも大きなものは「スノーモンスター」と呼ばれ、海外観光客を魅了している。占冠村の雪質は水分量が少ない、いわゆるパウダースノー。そのため樹氷は山形県の蔵王(ざおう)ほど巨大な姿にはならないが、枯れ枝についた雪はまるで白い葉を生い茂らせているかのようで幻想的だ。

白樺の枯れ枝に生い茂る白い雪の葉がとても幻想的(撮影:仲地宏樹)

 標高は100m上昇するたびに気温は0.6度に下がる。さらに風も強い場合が多く、山頂付近は山麓(さんろく)よりもかなり寒い。

 また、ゴンドラで登った山頂近くでも樹氷は見られるが、スキーなどで少し滑り降りれば間近から眺められる。撮影時には後ろからスキーヤーやスノーボーダーが滑って来ていないか確認しよう。混んでいる時や、見晴らしの悪い場所での撮影は衝突事故に繋がるので注意が必要だ。

■マイナス15℃以下の早朝に実験!「凍るシャボン玉」

マイナス24℃の早朝、凍ったシャボン玉(撮影:仲地宏樹)

 「凍ったシャボン玉」を作るためには、凍る温度に多少の差はあるが、マイナス15℃以下の早朝、風がほとんどない条件が必要となる。天気予報を毎日チェックしていたが、条件をクリアできる日がなかなか訪れず「凍ったシャボン玉」づくりの成功までに数日を費やした。

今回使用した市販のシャボン玉。凍りやすいように冷やす(撮影:仲地宏樹)

 ようやく条件の揃う日が訪れ、筆者は冷えこみの激しい午前6時から実験してみたが、簡単に思えて意外と難しい。少しでも風が吹いているとシャボン玉は流されてしまい、凍る瞬間を見られない。

 凍りやすくなるようにシャボン液を雪に突っ込んで冷やしたり、シャボン玉の大きさを調整してみたりと、いろいろ試行錯誤を繰り返した。

 そこでわかったのが、シャボン玉の大きさ。大きなシャボン玉は凍り切る前に割れてしまうため、小さなシャボン玉をつくることが成功のカギとなった。

シャボン玉の表面にはうっすら結晶が現れている(撮影:仲地宏樹)

 ようやくうまくいき、小さなシャボン玉は空中で凍り始め、雪に着地した頃には完全に凍っていた。部分的に破れても割れず、シャボン玉の薄い膜は残り続けているのがとても不思議に感じた。

 雪に乗っているシャボン玉は透明なため写真には映りづらく、はっきり撮影するには黒い背景が必要。そっと雪の下からすくい上げ、黒い手袋に乗せて朝陽を浴びせる。すると表面にはうっすら結晶が現れ、とても神秘的だ。

 朝陽に照らされるダイヤモンドダストや、雪の葉を茂らせた樹氷、大人も子どもも楽しめる凍るシャボン玉実験。まさに氷点下以下の世界でしか味わえない貴重な体験だ。

 写真や文章では伝わり切らないほどの感動を味わえるかも!?  ぜひ一度、自分の目で美しい自然現象を体感してほしい。

 

※この記事の情報は2023年3月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。