「しばれる」けど「ととのう」!「極寒」でも「絶景」! 氷点下でサウナ体験!【北海道・厳冬の釧路湿原レポート(3)サウナと鉄道】

 「宿からSLを見ることができますよ」

 雄大な釧路湿原国立公園を望み、本格的なフィンランド式サウナを体験できる宿泊施設「THE GEEK」のオーナーは教えてくれた。宿の前を走る釧網本線は東釧路~網走間の166.2キロを結ぶ路線で、夏にはトロッコ列車(「ノロッコ号」という)が走る。釧路川に沿って走る風景は美しく鉄道ファンにも人気だ。そして、冬季には「SL冬の湿原号」が宿の真ん前の塘路駅に停車する。

2年ぶりにSLによる運行が再開された「SL冬の湿原号」の勇姿(撮影:櫻井寛)
静けさに包まれる塘路駅。ここにはSLも停車する

 「国立公園におけるコンテンツ創出と利用のあり方を検討する」という旅を締めくくるのは、この「SL冬の湿原号」だ。JR北海道が誇る人気観光列車で、交通新聞社が発行する『JR時刻表』2023年1月号では表紙を飾っている。冬にしか運行されない季節限定の列車である。

JR時刻表2023年1月号表紙(交通新聞社)

■湿原を走る「鉄道」という魅力

 冬の釧路湿原といって誰もがイメージするのは、やはりタンチョウだろう。その美しい姿を見ることができたのは、旅も終わりに近づいた頃だった。列車の中からである。シラルトロ湖最寄りの茅沼駅前に広がる雪原に鶴が群れていたのだ。「冬の湿原号」に乗って釧路を目指す途中だった。そう、「鉄道」もまた釧路湿原における魅力的な観光コンテンツなのである。

 「冬の湿原号」は、道東観光の冬の風物詩として20年以上運行されている。標茶駅から釧路駅まで約50㎞を1時間40分かけて走る。車だと1時間弱でいける距離なのでかなりのんびりである。

 列車の出発前に標茶駅の近くの「ホテル テレ―ノ気仙」で、施設内の牧場で育てられている貴重なラムサフォークのジンギスカンを堪能し、赤褐色でヌルッとした天然温泉(モール温泉)で旅の疲れを癒す。

 昼食と日帰り温泉を堪能し、いよいよ列車に乗り込む。車内の売店で湯上りのビールを注文した。

■「冬の湿原号」は、車内もレトロ!

標茶駅に停車中の「冬の湿原号」

 JR北海道は2021年から2年かけて客車をリニューアルし、車内には達磨ストーブが設置されレトロな雰囲気だ。列車はゆっくりとした速度で走り、大きくとられた窓からは野生動物の姿を見ることができる。鹿は驚くほどたくさん見られる。天然のサファリパーク状態だ。仕事柄、全国で多くの観光列車に乗った経験があるが、車窓からこれほどの野生動物を見ることができる列車はない。車移動では得られない鉄道ならではの体験だろう。

注文したのはもちろんサッポロクラシック
車内に設置された達磨ストーブ

■特別天然記念物と念願のご対面!

 列車が茅沼駅に到着した時、車内アナウンスが流れた。

「進行方向右手をご覧ください。特別天然記念物タンチョウがいます」

列車の車窓からタンチョウが!

 雪原の向こうにはタンチョウと鉄道を写真に収めようとする鉄道カメラマンたちの姿も見られた。暖かい車内から鶴を拝めるとはなんとも贅沢な体験。列車は茅沼駅を出てほどなく、スノーシューでトレッキングした蝶の森のすぐ脇を通過し、鹿たちが駆け回る釧路湿原を眺めながら走る。早朝カヌーで下ったアレキナイ川を渡ると塘路駅に到着する。サウナを満喫した「THE GEEK」は目の前だ。宿の人たちが手を振ってくれている。とても温かい気持ちになった。

塘路駅に停車する「冬の湿原号」

 塘路駅を出た列車は程なく魅力たっぷりだった冬の釧路湿原に別れを告げる。車窓から民家がちらほら見えるようになると終点の釧路はもうすぐだ。

到着した釧路駅は夕陽に照らされていた