■山でも長期保存できる食材ってなんだろう?

クスクス料理もメニュー候補の一つだった。作っては食べての繰り返し

 少々前置きが長くなったが、豚汁にこだわるのは、私が味噌の味と山とにそんな思い出があるからだ。でも、豚汁は具だくさんを目指そうとすると、必要な具材が揃えにくい。具が少ない豚汁なんて、もはやただの汁。豚汁に合う他のおかずもなかなか思い浮かばない。

 シチュー、カレー、親子丼などの丼もの、パスタに生野菜サラダとスープ、クスクスなど、メニュー候補は他にもたくさん出た。

 スーパーをウロウロして、「この食材はどうだろう?  この料理、いいんじゃない?」なんて思いついても、荷揚げは年に一回きりだから、どうしても長期保存が効く食材に縛られてしまう。

■使う食材は長期保存と保管方法から考える

 山小屋は発電機を回せば電気が使える環境にある。小屋から下ったところにある水場から、ポンプアップして水をタンクに貯める時(タンクに貯めておくと蛇口を捻ると水が出る環境になる)や、朝夕食時など大体毎日4時間ほどは発電機を回している。同時に大型の冷蔵庫を使えるため、冷凍した食材も多少なら荷上げして保管することができる。

 しかし、ヘリが飛び立つ麓の川根本町に拠点のない私には、荷上げ時に大量の冷凍ものを保管しておく場所がない。また、山小屋のバックヤードは3畳ほどの部屋が一つしかないため、大型の冷蔵庫を何台も置くスペースもない。結局、それほど冷凍食材に頼ることもできず、昨シーズンは厳選した「これ!」というものに絞って荷上げするにとどまった。

ヘリ荷上げ当日の朝に届いた大量の鶏肉。ヘリコプターで小屋に運び上げます

 そんななかで選ばれたのは、大量の国産の鶏肉。缶詰を食材として使う料理も考えたが、翌年のヘリコプターの荷上げ時にゴミはまとめて下すので、シーズン中は使用後の缶ゴミを保管しておかなければならない。ゴミ置き場も狭いスペースしかないので、あまりゴミが残らないものがいい。

 冷凍以外で保存が効くものと言えば……。やはり、根菜かな。じゃがいも、人参、玉ねぎは山でもいけるか。味のアクセントをつけられるし、薬味にもなる生姜、ニンニクはたくさん荷揚げしておこう。

 こうして山小屋でも使えそうな食材を優先的に選んでみたのだが、もう皆さんもお気づきでしょう。そう、そんなこんなで光岳小屋の食事は、やっぱりカレーになりました!