トマト缶の使い道でもっともメジャーなのは、おそらくパスタソースでしょう。果肉を潰しながらコトコト煮て作るわけだが、「最初から細切れになってる方が楽だ」とカットトマトを使っているあなた! それは残念な使い方であります。

 カットトマトに使われているのは、ほどよい酸味を持つ丸型のトマトだ。果肉がしっかりしているため、トマト自体の食感を楽しむ料理に向いている。一方のホールトマトは、縦に細長い形のトマトが使われる。加熱すれば簡単に崩れるし、丸型よりもうま味成分(グルタミン酸)を多く含む品種なので、パスタソースに使うなら断然こっちがオススメなのである。

 ホールであれ、カットであれ、缶詰には「赤系トマト」という加工用トマトが使われている。露地栽培され、完全に熟してから収穫する決まりがあるので、生食用の「ピンク系トマト」よりも栄養価がずっと高い。そんなネタも後半に紹介するとして、まずはホールとカットをどうやって使い分けるのか、その一例を提案したい。

■見た目も味も違う

ホールとカットの中身はこれだけ違う

 それぞれの中身をあらためて観察してみよう。缶から取り出すと、ホールトマトは持ち上げるだけで崩れるほど軟らかいが、カットトマトのほうは形が保たれている。そのまま食べると、ホールは甘みが強くて濃厚な味。カットは比較的あっさりしていて、ホールよりも酸味が感じられる。普段、生で食べているトマトに近い風味だ。

 ちなみに製法はどちらも同じで、皮を湯むきしてからトマトピューレ(濃縮したトマトジュース)と一緒に缶に入れ、密封してから加熱殺菌してある。それでもトマトの品種の違いで、まったく違う味わいが出るのである。