■山頂に眠る古代祭祀遺跡
古代祭祀とは、縄文時代頃から平安時代あたりまで盛んだった、アニミズムと言われる自然崇拝のこと。大船山の場合、山自体が神であり信仰の対象であったため、神を祀っているのに社(やしろ)がない神社とも言える。こうした神域は「神奈備(かんなび)」と言われ、奈良の三輪山(みわやま)などが有名である。
なお、古代祭祀遺跡の残るルートは、大船山を遠望したときに山容が三角に見える部分。遠目で見ても傾斜が急なことはわかるが、実際に行くとかなりの急坂である。
また、この日は雪が積もっていたため滑りやすかったが、トラロープが張ってあり、慎重に一歩一歩進めば、そこまで危険を感じることはなかった。
古代祭祀遺跡は、案内板などが一切ないのだが、オーラで存在に気づいてしまう石垣や巨岩。ここで縄文時代より数千年、神を祀る儀式が行われていたのであろう。現地でしか感じることのできない神秘的な雰囲気に包まれている。
山頂は、灌木の手入れがされており眺望がよい。北摂(ほくせつ)の山々や、六甲山もよく見える。山頂にある祠も、古代祭祀遺跡のようだった。
大船山山頂にある「三田市・三田市観光協会・波豆川芸能文化保存会」の案内板によると、修験道が盛んだった時代には、祠に修験道の祖といわれている役行者(えんのぎょうじゃ)が祀られていたこともあるらしい。また、古代では瀬戸内海航行の目印の山でもあったとのことだ。
なお、大船山の本当の試練は下山である。登ってきた急坂を、今度は下りなければならない。ただ、積雪があることで適度な緊張感もあり、転倒することはなかった。むしろ、その後のほうが危ない。緊張の後に気が抜けてしまうからだ。筆者も最難関地帯を抜けてすぐ、つまづくものが何もないところで転倒し、雪まみれになった。最後まで気を抜かないようにしよう。