この季節の八ヶ岳に登ると、北北東の方角に真っ白に雪をまとう美しい山々の連なりが目につく。富士山を思わせる末広がりの山容。浅間山だ。そこから西端に位置する湯ノ丸山・烏帽子岳までを総称して「浅間連峰」と呼ぶ。

 とても大きな山域で、ちょうど長野県と群馬県を分ける県境でもあり、標高2,000m級の厳しい寒さもあって雪質の良さは折り紙つき。八ヶ岳に負けず劣らず、ウィンタースポーツに興じる人にとっては最高の遊び場だ。

 浅間山は活火山のため、状況によって立ち入り区域が制限されるものの、2023年1月末時点の気象庁の発表によれば「噴火警戒レベル1、活火山であることに留意」であった。佐久盆地(佐久平)側から車でのアクセスがよく、今シーズンもたくさんの登山者が雪を求めて訪れている。

八ヶ岳・天狗岳から北北東に眺める浅間連峰。向かって右(東)が浅間山

 このエリアに積雪があると、ぼくは真っ先に浅間連峰を訪れる。白銀の山肌に映える濃くて鮮やかな「浅間ブルー」の空の下には、雪に覆われた樹林が抜群に美しく、展望の素晴らしい稜線が続いてる。ここを歩くことは毎年のルーティン。もう何度も通っているけれど、何回歩いても楽しいのが雪の浅間連峰なのだ。

■【浅間連峰東部・黒斑山】雪の季節にしかお目にかかれない“ガトーショコラ”を目指して

黒斑山の山頂。浅間ブルーに映えるガトーショコラを眼前に

 冬の浅間山といえば、雪山登山者にはすっかりお馴染みとなった“ガトーショコラ”だろう。ここが火山であることを思わせる黒い山肌に雪が降り積もる姿は、まるでチョコレートケーキの上からパラパラと粉砂糖をまぶしたかのよう。この姿が“ガトーショコラ”と呼ばれ、親しまれているわけだ。

 この美味しそうな巨大ケーキを目当てに訪れるなら、標高2,404mの黒斑山からの展望がファーストチョイス。登山口は1,973m地点にある車坂峠で、黒斑山のビュースポットまでは片道2時間ほどの道のり。比較的歩きやすい地形と勾配から雪山入門としても人気を誇る。たくさんの登山者が入る山なので、初心者にとっては先行者によるトレースが心強い。雪の状態にはよるものの最低でも軽アイゼンとトレッキングポールは必要となる。

先行者の踏み跡(トレース)は頼りになるものの、地図アプリで位置情報も確かめながら進みたい

 黒斑山という名の由来は定かではないようだ。とはいえ、黒と斑という漢字をあてていることから考えると、そこかしこに点在する黒い露岩の様子から名付けられたのではないかと想像する。雪が降り積もればそれが斑のようによく目立つだろう。無雪期なら黒い巨岩の荒々しさがそこかしこに見られ、ここが火山の一端であることを感じさせる。

 眼前に迫る浅間山の姿ばかりでなく、晴れれば北関東の山々の中に妙義山を見つけることもできるし、上越国境の雪深い山々は神々しいばかり。もうちょっと展望を楽しみたいなら、黒斑山の先に続く外輪山の山々を巡ってみるのも楽しい。

鋸岳へと続く外輪山の稜線。ガトーショコラがますます近くなる。周囲の展望も抜群だ

 黒斑山の先は、蛇骨岳・仙人岳・鋸岳へと岩稜がつながっている。こちらまで来ると北関東から上信越国境の山々がさらによく眺められるし、四阿山の向こうには北アルプスの長大な連なりも。そしてガトーショコラはますます近くなり、迫力満点。ただし、距離が延びるだけではなく岩場もあるため、難易度はやや高くなることを肝に銘じたい。

 眼下に広がるのは、浅間山との間の樹林「湯の平」だ。そこから前掛山の頂へと続く道がトレースされているのが見えるなら、じっと目を凝らしてみよう。壮大なスケールの山を歩く小さな雪山登山者の姿を見つけることができるかもしれない。