■1. 南崎・小富士コース【概要とレポート】
2022年、日刊ゲンダイにて「行かずに死ねない景勝地100」にてベスト1に選定された南崎。こちらのハイキングコースの最奥にある小富士山頂から、絶景の南崎の景色を望むことができる。
起伏は少なく登山口から2時間程度で往復できるが、日没後は真っ暗になってしまうため船の到着時刻や自分の体力を考慮したタイムスケジュールを計画しておく。人間を襲う危険生物は生息しないが、必ずヘッドランプを携行しよう。水場や自販機などはなく、1リットル以上の飲み物も最低限必要だ。
また、小富士は日本で最も早く初日の出が見られるスポット、陸から楽しめるホエールウォッチオングスポットとしても有名だ。小笠原では2~4月がベストシーズンだが、12~5月頃までくじらが回遊してくるといわれる。
このコースでは、小富士へ向かう道中に南崎のビーチへ分岐するルート等もあり、時間さえあれば美しいサンゴ礁でシュノーケリングなども楽しめる。また、登山前に観光協会に申し込んでおけば、登頂記念証がもらえる。観光用の地図も豊富なのでもらっておくと便利だ。
登山中は、シティマップではなく登山用の地図やアプリなどを使わないと、現在地の把握が難しいため必ず事前に用意する。少なくとも、母島観光協会で簡単な登山ルートの書かれた地図を用意したい。
実際にこちらを歩いてきたので、以下にレポートする。
14時に母島へ到着。宿のチェックインを済ませ、バイクをレンタルした。登山口に着いた時にはもう15時30分を回っていた。
まず、登山口にある洗浄設備で靴底をきれいにする。外来の虫や種子などが侵入すると、希少な生物たちの生態系はあっという間に破壊されてしまうためだ。
歩き始めた瞬間から、ミクロネシアやポリネシア原産の湿生植物が豊かなジャングルだった。静かで、薄暗く、誰もいない。しかし、見えないのに生物の気配がする。遊歩道を歩いていると、近くを通るたびに「カラン」という音を立て貝殻に閉じこもる生き物の音がした。
動かない貝殻を足元で見つけたところ、天然記念物のムラサキオカヤドカリ。その音は、すり鉢展望台の手前まで続いた。
展望が開け、生息する生物にも変化が見られた。小笠原や母島固有の樹木や乾性低木林ばかり目立つようになる。ところどころで外来のアフリカマイマイが元気に草むらを這っていた。
後でわかったことだが、先のムラサキオカヤドカリはこのアフリカマイマイの殻にこもっていることが多い。そのため、最初は見分けがつかなかった。人の気配に敏感で、殻に入ると硬い体をしまう際に、カランと音が出てしまうのがヤドカリだ。
また森を歩き、ビーチへの分岐などを経て、一気に標高を上げると山頂だ。
森を見下ろせば固有種の珍しい森が広がり、海を見渡せば偶然海上に虹がかかり、奥まで進むと南崎ビーチのすばらしい絶景が望めた。冬はここからクジラが見られるという。
帰りは、南崎の海岸へ立ち寄り20分ほどビーチに座り、刻々と表情の変わる夕陽と波音に癒された。夕飯の時刻18時に間に合うように急いで下山し、17時50分頃には宿に到着した。
母島観光協会HP:https://hahajima.com/