■熊に出合ってしまったときの対策

定点カメラで撮影されたOSO18と見られる個体(画像提供:標茶町)

 多くの熊は人間を避けるが、近年は人間を恐れない個体も増えてきていると言われている。その要因の一つとして、昔に比べて狩猟者が減少している点が挙げられる。昭和55年には46万人いた狩猟者だが、平成29年には21万人になっており、昔に比べて人による狩猟圧が減っているのだ。また、そのうち61%が60歳以上と高齢化も進んでいる。

 最近では乳牛を襲う「OSO18(オソじゅうはち)」など極めて大型な個体も人を恐れず出てきている。ちなみにコードネーム「OSO18」は、初めて被害が発生したのが「標茶町オソツベツ」という地名であったこと、前足の幅が18cmであることが由来となっている。 これまで、人を恐れなくなった熊は狩猟者が速やかに処分してきたが、手が回らなくなりつつあり、人を恐れない熊が増えてきている可能性がある。「熊の方から逃げてくれない」ことがあり得ることを理解しておこう。

■出合ってしまった場合は、とにかく落ち着くこと

 出合ってしまった場合、急に走りだしたり大声を出して驚かしてはいけない。熊も人に出合って驚いているため、更に驚かせるとパニックになってしまう。熊は時速60kmで走れるため、走って振り切ることは難しい。

 まずは目をそらさずじっと見て、背中を向けずにゆっくりと後ずさりする。熊と自分との間に木などを挟めたら、急な突進などを防げる。ずっと立ち尽くしていると、熊にとっては敵対的な行動なので攻撃してくることがあるので要注意。

■近づいてきた場合の対処法

 それでも熊が向かってくる場合は、棒を振り回したり大声を出して熊を威嚇し、熊よりも強者であることをアピールしよう。車や建物など避難できる場所があれば入りたい。

 熊が至近距離まで近づいてきた場合に有効なのが「熊撃退スプレー」。強力な刺激成分をスプレー噴射するもので、防犯用の催涙スプレーの強力版と言える。大抵はこれで逃げたり怯むので、その隙に安全な場所まで避難しよう。とはいえ、熊撃退スプレーが万能という訳ではないことは、理解しておいてほしい。場合によっては上手く使えなかったり、効かない場合もあるので、「もし熊に出合ってしまったら」を想像し、あらゆる状況に対応できる準備をしておいてほしい。

 実際のところ、熊に出合う機会はなかなかない。それでもこうした事前の備えや行動を徹底することが、自分や一緒に行動する仲間の命を守ることになる。備えあれば憂いなし。ぜひ徹底して、秋の登山を存分に楽しんでほしい。