■【和歌山県・田辺市】夕陽に照らされるシワのごとき山稜と無数のススキに圧倒される「護摩壇山と龍神岳」

夕陽にあぶりだされた稜線が、ずっと向こうまで重なっている。じつに美しい光景だ

 標高1,372mの護摩壇山(ごまだんざん、ごまだんやま)は、つい最近まで“和歌山県最高峰”だった。山上まで高野龍神スカイラインが通っているため、車でアクセスすることができ、駐車場から頂までは歩いて20分もかからない。整備の行き届いた階段を登るだけの、なんの面白みもないような道に思えるけれど、じつはここも紅葉が見事ゆえ、落ち葉がふんだんでススキも見事。とくに夕陽の時刻になると、そのススキが黄金色に輝くため、このうえない絶景となる。

 護摩壇山という山名は、源平争乱の中で落ちのびた平維盛がここで護摩を焚き、平家の行く末を占ったことが由来だという。以前、この近くを縦断する小辺路(高野山と熊野本宮大社を結ぶ道)を歩いたとき、たしかにこの山域の周辺で平維盛の伝承を見聞きしたことがあった。壇ノ浦からはるか紀伊半島の南まで落ちたことにはただただ驚くばかりだけれど、歴史物語がたくさん伝わる南紀の山らしいエピソードだ。

この視線の方角に小辺路がある。高野山と熊野本宮大社とを結ぶ信仰の道だ

 護摩壇山のすぐ東側に隣り合うのは龍神岳。標高は1,382mと、護摩壇山より少しだけ高い。つまり、こっちが現在の和歌山県最高峰というわけ。2000年になってから、国土地理院がその事実を確認したそうだ。

 最高峰は変更となったものの、和歌山県のナンバー1と2が隣り合っていることには違いはない。そしてこの2座が、そのまま田辺市の最高峰とナンバー2でもある。

 龍神岳の山頂には、小辺路と熊野本宮大社の方角に絶景が広がる。山の稜線がどこまでも重なり続いていて、あらためて南紀の山並みの雄大さに感嘆する。夕陽が西の山の向こうへと沈んできたら、真っ暗にならないうちに駐車場に戻ろう。往復しても1時間とかからない手軽な行程である。とはいえ、夕刻に来るならヘッドランプなどの灯りは忘れずに持ちたい。

この季節ならではの、夕陽と落ち葉の共演。駐車場から龍神岳を往復しても1時間程度と手軽だ

 それはそうと、この季節に注意したいのが高野龍神スカイラインの冬季規制だ。12月になると凍結や積雪の可能性が高まるため、夜間は通行止めになる。昼間は通行できるものの冬用タイヤの装着は必須。チェーンを積んでおくとなお心強い。行く前には現地の交通事情を必ず確かめておこう。

 そんなアクセスが厳しくなる冬の間は、和歌山県では珍しい雪遊びが楽しめるフィールドとなる。運がよければ樹氷も見られるのだとか。ぼくは雪の和歌山はまだ未体験。いつかスノーシューでも持って訪れてみたいと考えている。

<低山トラベラー厳選。護摩壇山周辺の立ち寄るべきスポット>

・【温泉】なんといっても「龍神温泉」が最高!

・【観光】田辺市街地からほど近い「天神崎」は、まるで日本のウユニ塩湖。映える!

・【飲み屋】「味光路」は入り組んだ路地一帯の飲み屋街。美味い店が本当に多い!

・【お土産】梅干し、ミカンの箱買い、田辺っ子をまとめ買い!「産直市場よってって」

・【行動食】「鈴屋」のデラックスケーキは山の行動食にピッタリ!

・【アウトドアショップ】大型店のない田辺では貴重なお店「ストックアウトドア」。ツウ好みな品揃えも◎