こちらも併せて遊びに行きたい<熊野川編>
この美渓もご近所さんです<赤城川編>

 日本屈指の清流でありつつ、川下り後に川原を掘って温泉に入れるという夢みたいな川がある。周囲には世界遺産の観光スポットもあって、川旅にも最適だ。その川の名は「大塔川(おおとうがわ)」。全国的にはそれほど知られてないかもしれないが、個人的にはトップ5に入るほどの超清流だと思っている。美しい川と温泉を楽しむ、贅沢な大塔川の旅の模様を解説していく。

■大塔川って、どんなところ?

 奈良県、和歌山県、三重県を縫うように流れる大河・熊野川。その中流域あたり、和歌山県側から流れ込んでくる支流が「大塔川(おおとうがわ)」だ。合流地点から熊野川を3.5km北上すると、世界遺産の熊野本宮大社が鎮座する。古来より多くの人が熊野詣での途中で立ち寄り、癒された秘境の川こそが大塔川なのである。

独特な渓相と青く澄んだ水が美しい

 周辺には赤木川、和田川、四村川、北山川など清流が多く、熊野本宮大社以外にも瀞峡や丸山千枚田などの見所も多い。温泉も豊富で、なかでも世界遺産のつぼ湯を有する日本最古の湯の峰温泉、大露天風呂の渡瀬温泉、そして大塔川沿いにある川湯温泉は特に有名だ。この熊野川流域は、何度訪れても楽しむことができるホットスポットである。

 僕が大塔川に初めて出会ったのはまだ20代の頃。当時は川湯温泉を目的に訪れたのだが、その川の美しさに度肝を抜かれたのを覚えている。ただ水量の少ない川だったので、川下りには向いてないかななんて思っていたんだが、浅い水深でも下れるパックラフト(空気注入式ボート)の登場によって、それが可能となった。初対面から11年越しの思いを果たして下った結果、この川は僕の中でトップ5に入るほどの印象的な川となったのである。

パックラフトの登場が秘境へのハードルを下げた

 大塔川は鮎釣りの盛んな川でもあるので、快適に下るなら6月の解禁直後や夏季は避け、鮎釣りが落ち着く秋、解禁前の新緑の5月に下るのがおすすめだ。基本的に水量は少ないので、雨後の増水が落ち着いた頃合いを見計らって行くといいだろう。