2022年8月20日-21日、北海道で「SEA TO SUMMIT 大雪旭岳大会」の第10回記念大会が開催された。SEA TO SUMMITは、名前のとおり、海から山へと移動しながら自然を楽しむレース。ではなく、タイム計測は行うが、順位を競わないので“旅”の方がふさわしいかもしれない。

 2022年は全12ステージ。そのうち北海道は2回。全てのステージに出なくとも、行きたい山や町で大会が選べるのもいい。前日には環境シンポジウムがあり、豪華なゲストによるトークショーなど、その土地を楽しく学べる時間がある。翌日は、アウトドアのテクニックと体力を駆使して(または仲間で協力して)ゴールを目指す。

 私も実際にシングルの部で、カヤック、自転車、登山すべてにチャレンジしてみたので、その模様を中心にレポートしたい。

■旭岳・水・アウトドア・留学生など東川町が持つ特徴

山の景色と青空のコントラストが美しい姿見の池。地面から出ている湯気からは微かに硫黄のにおいがした

 旭岳は北海道の最高峰2,291m。日本百名山の一つ。本州では3,000m級の山にしか生息しない高山植物が見られ、ロープウェイがあるのでアクセスもしやすく、多くの登山者が訪れる。

 メインの舞台である東川町は、国道、鉄道、水道がなく、手付かずの美しい自然が残っている。「神々の遊ぶ庭」とも呼ばれている旭岳からの雪解け水を利用し、飲み水を地下水で賄う珍しい町である。中硬水なので、コーヒーにもよく合う。森や水の美しさに惹かれ、移住者も多く、カフェ、レストラン、アウトドアショップが点在し、活気がある。

 さらに、国内初(2015年)の公立日本語学校を設立し、海外からの留学生を多く受け入れている。何度か東南アジア人の学生が自転車で通っているところを見かけた。町の文化交流所でもある「せんとぴゅあ」では、大雪や旭岳の資料が並んでいて、留学生と、東川町で生まれた学生がそれぞれのスペースで勉学に励んでいるのも当たり前の光景だ。

環境シンポジウムでは自然環境の変化やアウトドアスポーツとの親和性などについてゲストトークがある。(この日はモンベルの会長辰野勇さん、俳優の宍戸開さん、元スピードスケート選手の岡崎朋美さん、チェアスキー協会理事の野島弘さんらがゲスト)10回記念大会ではSEA TO SUMMIT開催の歩み、各ステージの市長や実行委員長による祝辞とその土地の特徴など動画が流れた

 環境シンポジウムにも登壇した松岡市郎町長は「地方行政は大変だと言うけど、マイナスをプラスに変えるような発言をしたほうが元気になれる」(『Higasikawa Style』産学社より引用)といつも前向きだ。

 新しいアウトドアアクティビティを観光の中に取り入れる当イベントの思いと一致し、2011年の6月に始動。今回で記念すべき10回目の開催となり、参加者も32人だった第1回からおよそ6倍となった。

■SEA TO SUMMITはパラチャレンジ部門があるのも特徴

 2018年からはパラチャレンジ部門も増設。障がいのある方や、体力に自信のない高齢者も能力に応じて、希望のステージのみで参加が可能となった。または伴走者とのチーム参加によって、全ステージ完走を目指すこともできる。

パラチャレンジ部門では、日本チェアスキー協会理事で一般社団法人 ZEN代表理事の野島弘さんが参加。選手宣誓をした

 最近流行しているE-BIKEでの参加も認められており、お子様との親子出場、女性同士、もしくは孫と一緒に出たい方など、アウトドアを楽しみたい初心者でも新しいカタチでチャレンジできるのが面白い。