■平泉寺の名の由来となった「御手洗池」

 旧参道を歩いてもよいが、境内の近くに駐車場があり、多くの人はそこから歩く。筆者が訪れたのは8月の日曜日の午後だったが、観光地とは思えないほどひと気がなかった。拝観料は無料。京都の「西芳寺」が予約制で拝観料(参拝冥加料)が、1人3000円以上なのと比べると随分な違いだ。

境内入口「精進坂」。休日にもかかわらずひと気がない
苔に覆われた「御手洗池」

 途中、左手に「平泉寺」という名の由来となった「御手洗池(みたらしいけ)」がある。泰澄大師が池のかたわらで祈っていると、白山の女神が現れたという。苔に覆われ、映画「もののけ姫」のような幽玄な雰囲気が漂う。神秘的なパワースポットという感じだ。

■ぶ厚い苔に覆われた「拝殿」

 やがて「平泉寺白山神社」の象徴「拝殿」が見えてくる。老木に囲まれて昼も薄暗い。

「拝殿」はひっそりとした佇まい

 「拝殿」は中を窺うことはできず、賽銭箱もなく、ひっそりとした佇まいだ。ただただ苔に覆われた場所という印象しかない。苔を見ながら散策する。

苔にもいろいろな種類があるのだと思う

 何百年もの間、雨に濡れ雪の下になり、大輪の花を咲かすことも枯れることもなく、ここの苔は生き続けてきたのかと思うと気が遠くなる。有名な神社仏閣というのは手入れが行き届くことでその美しさを維持しているのだろうが、ここは人の手が入った気配が全く感じられない。本当にここに日本有数の大寺があったのだろうかと思う。

静謐が見事な苔を育んだ

 苔の見事さに見惚れるとともに、世の儚さと、悠久の年月に思いを馳せた。この先百年後、そして千年後も、ここの苔は姿を変えずにいることだろう。いつか人類の時代が終わり、文明の形跡が消えたら、地上はこんな風になるのではないかと、ふと思った。

施設情報
・平泉寺白山神社
福井県勝山市平泉寺町平泉寺56

アクセス
・車
 北陸道福井北ICより、中部循環道(無料区間)経由で約35分
・電車
 えちぜん鉄道福井駅から52分で勝山駅、勝山駅からバス・タクシーなどで約10分から15分

■MAP