明治末期の北海道を舞台にした漫画「ゴールデンカムイ」。聖地巡礼で北海道を訪れるファンも多い。特に、北海道の日本海側に現存する明治・大正期のニシン御殿は、当時の人々の暮らしを生き生きと今に伝えている。今回は、北海道のニシン御殿のなかでも、ぜひ訪れてみてほしい3施設を紹介する。

■ニシン漁の盛衰とニシン御殿

小樽市鰊御殿からの景色(写真:佐藤麦)

 ニシンと聞くと、黄金色に輝く数の子(ニシンの卵)を思い浮かべるかもしれない。ニシン漁は、北海道西海岸で明治期から大正期にかけて黄金期を迎えた。毎年3~6月に産卵するニシン。大群となってやってくることを群来(くき)といい、海は白濁、空にはカモメが飛び交い、漁師たち(やん衆)は我先にと舟を出した。やん衆の多くは東北地方からの季節労働者で、1年間の生活が春先の漁にかかっていた。そんな、やん衆が寝泊まりしていたのが、網元の居宅兼漁業施設、通称「ニシン御殿」、別称「番屋」だ。

 明治30年のピーク時には年間約100万トンもの水揚げがあったニシンは、昭和30年代になるとすっかり姿を消し、ニシン御殿も数を減らしていった。その背景には、乱獲や海水温の変化などの影響があったと言われている。

 現存するニシン御殿は、ニシン漁の繁栄と衰退、当時の人々の暮らしを今に伝える貴重な文化遺産なのだ。

■小樽市鰊御殿

ゴールデンカムイの物語のはじまりは、小樽から(写真:佐藤麦)
小樽市鰊御殿の漫画にも登場する客間と階段。客間の奥には、隠れ部屋もある(写真:佐藤麦)

 小樽市に現存する明治・大正期の建物は、ゴールデンカムイの作中にも登場する。そんな建物のひとつが、泊村のニシン親方、田中福松氏によって明治30年に建てられた、「小樽市鰊御殿」だ。現在は、小樽の街を見下ろす高台に移設復元されている。道内の民家で初めて北海道有形文化財にも指定され、総面積は611.9平方メートル、約540トンの材木をふんだんに使った贅沢なつくりの建物には、全盛期120人ほどのやん衆が寝泊りしていた。

 小樽には他にも、小樽三大網元の 1つ青山家の別邸「にしん御殿小樽貴賓館」が小樽市鰊御殿から徒歩15分ほどの場所にある。あわせて訪れてみてはいかがだろうか。

●小樽市鰊御殿

・住所 小樽市祝津3丁目228番地
・電話番号 0134-22-1038

・ホームページURL https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020100900596/
※営業日時はホームページよりご確認ください