■忘れられない言葉

伊藤さんとは幾度か山にも行ったっけ

 出会いはそんな感じだったけれど、私たちは同い年で、なんだか気が合うのだ。2人のタイプは全然違うし、芸術的なセンスはわたしにはない。代わりにあるのは、圧倒的な田舎娘感くらいかな。ちょくちょく近況をやりとりしたり、(しかも手紙で)年に一度会えたらよい、そんな関係である。

 昨年の夏、彼女は光岳に登ってきてくれて、手拭いの打ち合わせをしたのだが「山小屋は、花ちゃんのクリエイティブな活動だね」という彼女の言葉が忘れられない。そうか、私はこれから「こんな場所にしたい」を作っていけるのだな、と嬉しくなったのを覚えている。

 いろんな人の力を借りながら、なんとか進んでいるけれど、彼女もまた、ひょこっと現れて力を貸してくれる。

■手拭いは頭に巻いてこそでしょ! 

賄いラーメンにはやっぱり手拭い! 気合いが入ります

 手拭い制作にあたって大切にしたいポイントがいくつかある。1つは、長年使用すると変化があり、それを楽しめるもの。いつまでも線がきれいに見える、使い続けたい手拭い。ものに溢れる現代社会だからこそ、せっかくなら1つのものを長く愛用して欲しい、大切にして欲しいと思う。だから色が落ちてきても、それはそれでまた良き、と思える手拭いを作りたい。

 また、頭に巻いたときに素敵に見えるものが良い。最近、皆さんは手拭いを頭に巻かないのかもしれないけれど。わたしが手拭いを巻きたいときは、キリッと気合を入れたいときだな。山小屋でも、農作業でも、剣道でも、集中したいときは巻くもんね。最後に、男性、特に中高年の男性に使って欲しい。山小屋の売店に立っていると、男性ってあんまり手拭いを手に取らない気がする。性別を問わないものが良い。

 好みは人それぞれだけれどそんな欲張りな手拭いが一体できるのか。どうだろう。私も完成を楽しみにしている。