大阪と奈良にまたがる生駒山系の麓で、トレイルランニングを中心としたアウトドアショップ「アウトドアベース・ソトアソ」を営んでいる菊川です。駅近、山近の立地にある店舗では、ほぼ毎週末イベントを開催して「オトナのソトアソビ」を応援しています。

 この連載では、うちのお店からすぐに裏手にある生駒山系を中心に、地元で暮らしているからこそわかる関西圏の里山エリアの魅力を発信していきたいと思います。

 今回は私市(きさいち)の街から歩いて数分で苔むした巨岩に出会える、通称「巨石伝説アドベンチャートレイル」をご紹介します。今晩、フジテレビ『世界の何だこれ!?ミステリー』でも紹介されたトレイルで、総距離は6.66km。ゆったりハイキングのペースで3時間半ほどで回れます。

巨石に続くトレイルは住宅街からスタート

 京阪電車「私市」駅で降り、住宅街を抜けると10分で辿り着く里山のトレイルヘッド。ここが岩マニアにはたまらない巨石巡りの起点となります。

 交野周辺の山をめぐるハイキングの人気ルートに繋がっているが、ここはほぼ終着地点なのでハイカーさんとすれ違うこともあまりありません。とても静かなエリアで、手つかずの自然がそのまま残っています。

 登山口に入り、シングルトラックの上り坂を進んでいくと、上下に分かれる分岐が現れます。ここは「手つかずの自然度」が高い下の道を進んでいきましょう。

 木漏れ日を感じながら、倒れたままの朽ちた木を跨いだり、迷いそうな脇道に注意しながら顔を上げると、苔をまとった「巨石第一号」が目の前に現れます。ここからは、あたりは巨石の宝庫。足元にはさまざまな種類の苔が広がり、まるで苔の博物館のようです。

「土生」という地名は「道場」の名残?

 このトレイルは生駒山塊の普見山(北生駒山)山中にある山寺「獅子屈寺」の山域で、1200余年前に弘法大師がここに籠って修行をしたとされる場所。転がっている大半は名もなき巨石ですが、ルート終着点にある「龍岩窟」や「獅子窟」などの巨岩群は、信仰の対象として今も大切に守られています。

昔はこの山道も利用されていた。今は通る人も少なく、朽ちた看板が点在している

 この谷奥エリアは、かつて獅子窟寺の行場だったという言い伝えがあり、近くを流れる土生川は「土生」と書いて「どうじょう」と呼ばれています。つまり、ここが「道場」として利用されていた名残と言われているのです。

 また、この場所が忘れ去られた存在になると、村民からは「キツネ山」「狸谷」と恐れられるようになり、狸に化かされて谷奥に誘い込まれるという背筋がひんやりとする言い伝えも残っています……。

アドベンチャールートの出口。そびえ立つ「八丈岩」を下から眺める
尾根道を進み、街を見下ろす