北信州にも春の訪れがやってきた。三寒四温を繰り返しつつ、厳しかった冬も終わりを迎えようとしている。

 「雪国に春を告げる花」として知られるフクジュソウは、漢字で書くと「福寿草」。幸運と長寿を招く花として親しまれている。南岸低気圧の通過で雪景色に舞い戻った山の斜面。うっすらと積もった雪から黄色い花たちが、寒さに耐えるように顔を出していた。

■長野県、東・北信随一のフクジュソウの群生地

縁起のいい名前の「福寿草(フクジュソウ)」は雪国に春を告げる

 長野市郊外の「七二会(なにあい)」の山の斜面に広がるフクジュソウ群生地。長野県の中信(中部)エリアには有名な群生地がいくつかあるが、東・北信エリアでは随一の規模だという。

 国道19号線から山間を車で走ること約15分、駐車場(駐車料金 300円)から徒歩で山道を歩いていく。しっかりと整備はされているが、距離もある(約450m)ので歩きやすい足元、服装が望ましい。

おもしろい形の春のキノコ。シロキツネノサカズキモドキ

 杉林を抜けると広がる急な斜面一面にフクジュソウの群落が待っている。花期は例年3月上旬〜4月上旬で、今年は3月20日〜4月10日が見頃のようだ。黄色い花が一斉に咲き誇っている姿は、早春のくすんだ景色に華やかさを演出してくれている。他にもアズマイチゲやシロキツネノサカズキモドキなどが見られる。足元を注意深く探してみよう。

■真新しい雪景色に咲く黄色い花々

雪に覆われた斜面に顔を覗かせる黄色い花々

 ようやく暖かく春の兆しを感じていた数日間だったが、寒の戻りで再び冬模様。湿った雪が山の斜面を覆っていた。まさに見頃を迎えて開花していた花々は、寒さにじっと耐えながら雪溶けを待つような様子で花弁を閉じてうなだれている。

 それでも静かに降り積もる真新しい雪とのコントラストは美しく神秘的で、その姿はまさに「スプリング・エフェメラル(※)」。黄色い妖精たちにそっとエールを送った。

※ 春先に開花し夏まで葉をつけると、残りの時期は林床などの地中で過ごす山野草の総称。「春のはかない命」。