■女性や子どもを守る「宝光社」の神
中社からさらに県道を下ったところにあるのが「宝光社」。長野市街地から県道で戸隠に向かった際、一番初めに出合うのがこの社だ。宝光社の社殿は、文久元年(1861年)に建てられた、戸隠神社5社のなかで最も古いものだという。祭神の「天表春命(アメノウワハルノミコト)」は、中社の祭神の子にあたる。開拓、学問技芸、裁縫の神、安産の神、女性や子どもの守り神とされているが、鳥居の先には270段以上の急な階段が続き、女性・子どもにはなかなかきつい。だが、長い階段を迂回して登れる「女坂」もあり、こちらから社殿に向かうこともできる。
■「九頭龍社」が祀るのは地元の神様
「九頭龍社」は奥社の隣に鎮座し、地主の神として、そして戸隠山の守護神として、古くから信仰されてきた。祀られているのは「九頭龍大神(クズリュウノオオカミ)」。古来より龍は雲雨を支配する水神と考えられ、全国各地に龍を祀る神社があるが、この九頭龍社に祀られているのも、生命の源、水をつかさどる雨乞の神とされている。虫歯の神でもあり、虫歯になったら好物の梨をお供えすると効く、なんていうご利益もある。ほかにも、心願成就、魔除けの神、縁結びの神など、さまざまなご神徳があるのでまさに地主神といえるだろう。
■「火之御子社」の主祭神は芸能にご利益あり
「火之御子社」は中社と宝光社の間に位置し、主祭神は「天鈿女命(アメノウズメノミコト)」という女神だ。「岩戸伝説」に出てくる、岩屋の前で舞いを踊ったのがこの神様。このときの舞が、神楽のはじまりといわれている。だから舞楽芸能上達のご利益があるとされ、ほかにも、開運、縁結び、火防の神として崇められている。神仏習合の時代も火之御子社だけは神社のまま続き、地元に伝わる「戸隠神社太々神楽」はこの社に仕える人によって守られてきた。県の無形民俗文化財に指定されているこの太々神楽は、天の岩戸開きにちなんだ舞や、災いを打ち払う舞、水を司る神に扮して五穀豊穣を祈る舞などがあり、年間70回ほど献奉されて、無料で拝観できる。
■5社をめぐりながら観光も
冒頭に説明した「岩戸伝説」のストーリーを頭にいれてから5社をめぐると、祀られている神がより身近に感じられるはずだ。霊験あらたかな戸隠神社は5社それぞれに趣があり、車がなくても徒歩やバスを利用してめぐることができる。各所にそば屋があるので、散策しながら日本三大そばのひとつ「戸隠そば」も味わえる。また、戸隠には神社周辺に数多くの宿坊があるので、滞在してゆっくり5社参拝するのもおすすめだ。宿坊では、伝統的な精進料理や地元名産を味わうとともに、社殿での祈祷や朝拝などの寺社文化を体験することもできる。
■【MAP】戸隠神社 中社