■美濃和紙商家の栄華「うだつの上がる町並み」

 川旅道具一式を担ぎ、JR岐阜駅からおよそ1時間ほどバスに揺られていくと、美濃市にある「うだつの町並み通り」に到着する。ここはかつて、美濃和紙の水運で発展した町だ。“うだつ”というのは、屋根の両端を一段高くして火災の類焼を防ぐために造られた防火壁のことで、裕福な家ほど立派なうだつが上がっている。「うだつを上げる・うだつが上がらない(僕がよく嫁から言われる言葉)」の由来は、ここから来ている。

いい加減うだつの上がる男になりたい……

 奈良時代から歴史がある美濃和紙は、江戸時代になると長良川の水運で大いに発展した。明治末期になると電車の開通で水運業は衰退してしまうが、美濃和紙の評価は現代に至るまで変わることはない。最近では、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の表彰状に使用されて話題となり、SDGsの理念を体現する伝統産業としても注目を集めている。

美濃和紙商家の栄華を感じる「旧今井家住宅・美濃史料館」
美濃和紙の魅力に触れられる「美濃和紙あかりアート館」

 風情のある町並みを散策し、大正元年から続く食事処「山水本店」で早めのランチを食べ、スタート地点の上有知湊へと移動した。そこには、現存しているのは全国的にも珍しい「川湊灯台」が静かに佇んでいた。かつて水運の要所であったこの場所で、夜毎長良川の川面を照らしていた川の灯台だ。この場所から、当時の美濃和紙水運を辿る形で川を下り、小瀬湊を経由して中川原湊を目指す旅が始まるのである。

県指定文化財「川湊灯台」。川湊公園にトイレあり