「いつか二人で旅をしたいね」と話した夢が叶う日がやってきた。こう見えて、ワールドカップ総合女王とオリンピック金メダリスト。かつて世界をひざまづかせたモーグル女子の好敵手同士がおおらかに雪山を歩き、ギューンと滑って、大いに笑った数日間。そんな東北・青森の旅を、上村愛子が自ら振り返ります。
(前編)

八甲田山へバックカントリースキートリップ!

文=上村愛子、写真=板倉淳夫、協力=星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル、八甲田ロープウェー、八甲田山ガイドクラブ

■待ちに待った多英さんとのスキー旅行が実現した

 吐く息が風船ガムのように白く大きく膨らんでいくキンキンに冷えた朝、その日一番の八甲田ロープウェーに乗り込んだ。

 朝一ということもあり、びっしりと張り付いた窓霜と、眼下に広がる真っ白な樹氷の森に感嘆の声を上げる私たち。ときおり互いに写真を撮り合って会話を楽しみながら、山頂駅まで思い思いに時間を過ごした。

 今回このスキー旅行を共にしたのは競技時代の先輩、里谷多英さんで、私が14歳の頃からの付き合いになる。引退後も食事をしたり連絡を取り合ったりする仲で、「一緒に旅行したいよね」と話していたのだけれど、なかなかタイミングを作ることができなかった。今回それがついに実現することになった。

前を見て登る二人と、キョロキョロしている私。景色も見たいし会話もしたいし!

 現役時代、初期の頃は多英さんと同部屋になることが多かったのだけど、やはり顔を合わせづらい空気になることもあった。でも、それは好成績を目指す選手同士だったから、仕方なかったことだと思う。

 選手という意識を離れれば、一人の女性として大好きな憧れの先輩。相手のことを慮りながら話ができる精神に私がようやく追いついた頃、大切な友人と言える間柄になれたと、私は勝手に感じている。

 今では選手時代の記憶の共有だけでなく、それぞれの人生の様々な場面や表情や感情を語り合い、笑い合える貴重な存在になった。そんな気心知れた多英さんとの旅行は、理想の旅行の一つだと思っている。

 しかも今回は、八甲田山でバックカントリースキーをするというのだから、私はずっとワクワクしながらその日が来るのを楽しみに待った。

道具を扱うのも好き。「すっかり山女だなぁ」と言われ素直に喜んだ
このシルエットはどう見てもシンゴジラ。この後、ピグモンも発見