春に森を歩いていると、”モフモフな姿をした虫”が見られることがある。まるで妖精のようにかわいらしい姿を持つこの虫の名前は「ビロウドツリアブ」だ。
その正体と探し方について、早速、解説をしていこう。
■ビロウドツリアブはどんな虫?
ビロウドツリアブは「ハエ目ツリアブ科」に属する昆虫だ。
ツリアブの仲間はホバリング(空中で静止する飛び方)をよくする。ホバリングしている姿が”まるで吊り下げられているかのように見えること”が「ツリアブ」の名前の由来である。
なかでもビロウドツリアブは、「ビロードのような長い毛」を持つのが特徴的だ。
また、ビロウドツリアブは非常に長い口吻(こうふん)を持つ。ビロウドツリアブは花の蜜を吸うが、この長い口吻を使うことで、スミレやオオイヌノフグリ、ウグイスカグラなどのさまざまな花蜜を吸うことができる。
ちなみに、名前に「アブ」と付いているが、ツリアブの仲間は人を刺すようなことはないので安心してほしい(吸血性のアブのほとんどは「アブ科」に属する種だ)。
◼️ビロウドツリアブは春だけに出会える虫
ビロウドツリアブのユニークな点は「出現時期」にもある。ビロウドツリアブの出現時期は3〜5月頃。つまり、”春限定”で出会える虫なのだ。
ところで、植物にも春先の短い期間限定で花を咲かせるものたちがいる。このような生態を持つ植物たちのことを「スプリング・エフェメラル(春のはかないもの、という意味)」と呼ぶ。スプリング・エフェメラルの植物といえば、カタクリが有名だ。
じつは植物にとって、春先というのは花を咲かせるのには適さない季節。なぜなら、受粉を手伝ってくれる昆虫は少なく、寒の戻りで凍結や雪に見舞われることもあるからである。
ではなぜ、そんな時期に花を咲かせるものがいるのか? それは、リスクに伴うメリットがあるからだ。
そのメリットとは「ライバルが少ない」ということ。スプリング・エフェメラルの植物たちは背の低いものが多い。植物たちが光合成を行うには「光」が必要だが、背の低いスプリング・エフェメラルの植物たちにとって、背の高い植物たちと競争して光を勝ち取るのは難しい。そこで、ライバルの少ない季節に先行して花を咲かせることで、「ライバルと争わない戦略」を取っているのだ。