■段取り8分「荷上げは下げ荷作りから始まる」

3つのモッコに分けた荷物。濡れないようにブルーシートを被せる

 荷上げ前に片付けと備品確認、小屋の整理整頓のために一度登っているため、小屋に何があるのかは事前に確認済み。ヘリでの荷上げ予定日一週間前、天候を見て下ろし荷を準備するために再度入山した。

 ちなみに、「下ろし荷」とは山の上からヘリで下に運んでもらうための荷物のこと。日々のゴミや使用済みの杉チップなど、山小屋には不要なものがどんどん溜まっていく。荷上げと同じくらい、荷下げもヘリを飛ばす重要な仕事の1つなのだ。

 光岳小屋は2年間クローズしている山小屋なので、下ろさねばならない荷物が大量にあった。空っぽの燃料容器200kg×4本、ガスボンベ×3本をはじめ、大量のゴミたち。

 ゴミの思い出でとくに強烈だったのは、2年前の生ゴミ。光岳小屋では以前、食べ残しに熊が悪さをしたことがあるらしく、その対策として生ゴミは外のドラム缶の中に入れて蓋をしめて置いていた。蓋をしていたはずのに、開けてみると大量の水が溜まっている。なんだか発酵しているような、ドロドロの異臭を放っている……。ひー。生ゴミの保管方法も考えなくてはならないな。

 それから少しばかりだけど、原田さんの私物も下ろす。小屋にすでにあるものはそのまま引き継いで使いたいけれど、どうしたって使えないものが出てくる。そういったものをまとめて梱包して、モッコの中へと運ぶ。

 1つ1つ手にとるたびに「使わないかもしれないけど、何かに使えるかもしれない」という考えが働く。せっかくこの場所にあるのだし。でも、小屋は置き場所が限られている。備品をうまく整理整頓して、余計な荷物はほどほどにしないと、とてもじゃないけど収まらないのだ。

 土曜日、登山者たちに見守られながら一日がかりで下ろし荷をまとめる作業を終えた。

<続く>