■幽玄紅葉セクション

 天竜川の難所「鵞流峡(がりゅうきょう)」を抜けた先、時又港を越え、薄緑色の姑射橋(こやきょう)をくぐると、そこからは「天竜峡」といわれる紅葉で有名な景勝区間が始まる。両岸にそそり立つ岩壁、そして、そこにへばりつくように点在する紅葉のグラデーション。所々の岩には漢文が刻まれていたりして、周りの幽玄な雰囲気と相まって、中国の山河を行く李白気分だ。

朝霧の時間帯などには幽玄度はさらにアップするだろう

 ここは危険な瀬もないので、ゆったりと漕いで景色を愛でるといい。初級者の人は時又港からこぎ出し、この区間からゆったりと下っていくといいだろう。つつじ橋という吊り橋付近では、観光客のおばちゃんたちにパシャパシャと写真を撮られて、プチ韓流スター気分も味わえるぞ。

 天竜峡大橋手前には、飯田線の鉄橋も登場する。運が良ければ、川の上からそこを通るのどかな飯田線の電車を眺めることができ、鉄道好きにはたまらないスポットにもなっている。

■無人工物のんびりセクション

 天竜峡大橋を越えると、そこからは人工物の見えないのんびりとした区間に突入する。流れも穏やかで山容も穏やかになり、先ほどまでの中国的幽玄な世界から日本的里山の風景になるのだ。

個人的にはこの区間が大好きで、若い頃は、よくこのあたりの雰囲気の良い川原で焚き火を熾して、ひたすら本読んでグダーっとしたものだった。

人工物は見えず、のんびりとした流れが続く