流木も豊富なため、紅葉の寒い時期には鍋がたまらなく美味い。川原メシの美味さを知ったのもこの川だった。

 鍋をハフハフ食ってると、目の前の川では天竜舟下りの和船がスイーッと通り過ぎて行く。こっちが手を振れば、観光客たちも手を振り返してくれ、船頭さんも笑顔で会釈してくれる。立場は違っても、良い川では同じ自然の空間を共有した者同士、不思議と一瞬で仲間意識が芽生える。人のいない荒野の川旅も好きだが、こういった適度に人との距離が楽しめる川も僕は好きなのだ。

川原で食えば美味さも5倍!
「赤から」紅葉鍋(5辛)!

 たらふく飯を食って昼寝をかましたら、あとはもうゴールの唐笠駅に向けてウダウダと漂流するのみ。こういう時はできるだけ頑張って漕がないのが正しい下り方だ。やがて唐笠駅直下の岸でゴールである(間違って個人の敷地内に上陸しないように。少し下流の砂地から上陸しよう)。

 近隣の温泉は、唐笠付近だと“峰竜太のふるさと看板”でお馴染みの下條村にある「下條温泉郷コスモスの湯」があり、天竜峡付近には「天竜峡温泉交流館 若がえりの湯」、弁天港付近には市営の温泉「ほっ湯アップル」がある。グルメだとやはり蕎麦が有名で、道の駅「信濃路下條そばの城」などがおすすめだ。

紅葉×川下りの贅沢な川旅

 前半はスリルを楽しみ、中盤は景勝を愛で、後半はのんびりと癒される。1日でこれほど起承転結がしっかりした川はなかなかないだろう。紅葉のシーズンがおすすめだが、もちろん夏に釣り師を気にせず爽快な鵞流峡をいくのも相当楽しいし、春には天竜峡手前の右岸に桜も植わってるため花見下りだって楽しめる。初級者から上級者まで、オールシーズン楽しめる天竜川。僕がそうであったように、今後もこの川からたくさんの川旅人が誕生していってもらいたいものである。

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