■“川旅”を意識したのも、この川

 いい感じの川原でメシを作って食うと、信じられないくらいウマイってことを知ったのもこの川だった。あえて地元の食材を現地で買って(よく道で無人販売していたりするやつ)、それを食っては旅気分を高めていた。川下りの前後にどこに行くか、川下り中に上陸して面白い散策ができないかもずっと考えていた。川下りってのはあくまでも旅の一部であって目的じゃない、ってことを意識し始めたのもこの頃だったかもしれない。

地元食材を食ってこそ旅感がアップする

 そして、初めて1人で川を下ったのもこの川だった。その時の開放感や自由度は、僕の中の熱い何かを激しく刺激したのを覚えている。1人だし、誰もいないし、寒いしで、周りから見るとまったくいいとこが無いように思えるが、それが妙に心落ち着いて充足した気分だったのだ。多分その時の「絶妙な寂寥感」に魅せられていった事が、のちのユーコン川単独行にまで発展するきっかけになったと今では思っている。そういう意味では、この川は僕の根幹に影響を与えてくれた重要な場所だったのだ。

ヒリヒリするような自由は若者に多くの影響をもたらす

 パックラフトを買ってからは清流ハンターになったこともあり、長くこの川からは遠ざかっていた。しかし2018年に再訪を果たした時、天竜川は当時と変わらぬ姿のままで、「やっぱり川って楽しいな」と思わせてくれた。僕はすっかりおっさんになっていたが、再び何か熱いものを点火された気になった。

 次回は、その時の模様をお送りしつつ、代表的な川旅コースの詳しい紹介をしていこうと思う。