■あなたの知らない青森・恐山「3つの顔」

荒涼とした風景と鮮やかな色の風車

 恐山は3つの顔を持っている。

●1つ目の顔:「怖い・恐ろしいイメージ」

 恐山の名前や、和歌山県の高野山・滋賀県の比叡山と共に日本三大霊場に数えられること、死者の口寄せを行うイタコ(東北地方の女性霊媒師)がいることなどから、一般の人がイメージするのは「恐ろしさ」かもしれない。首都圏から遠く、実際に現地に訪れたことがない人が多いことも、このイメージが先行する原因と考えられる。

●2つ目の顔:「荒涼とした風景・鮮やかな色の風車」

 実際に恐山に行くと、火山活動による噴気があがる、ゴツゴツした岩が積み上がる荒涼とした風景に出くわす。また、灰色の岩の間には色鮮やかな風車がカラカラと音を立てて回っている。この風車は、早くに亡くなった子供があの世で遊べるようにと供えるものである。

 荒涼とした風景は火山活動の賜物であり、風車は亡き子供を想う気持ちを体現するものである。自然が生んだ風景と人の想いとが調和した光景に「恐い」場所のイメージは消え、逆に「美しい」という感情が湧くに違いない。

●3つ目の顔:「穏やかな凪いだ景色」

 噴煙があがる区間を抜けると宇曽利湖畔に出る。湖畔では風の音と少し遠くから風車の音が聞こえるのみ。ただ静かに、遠くに見える大尽山を望む。湖畔も波も穏やかな風景に無心になるばかりである。

■自然と人の織りなす風景に感じ入る

どこまでも凪いでいた宇曽利湖

 恐山に行ってみると、一般的にイメージされている「恐い」という感情ではなく、その風景の美しさに心を奪われる。火山活動が生んだカルデラ湖、外輪山、荒々しい岩場、さらに風景に信仰を覚えた人の想いが溶け合い独特の情景が描き出される。

 恐山に参拝される際は、開門したばかりの早朝、静かな時間にお参りし、風車の音や風の音、山々と湖が織りなす風景にひたってみてはどうだろうか。