世界最高峰「エベレスト」の名は、みなさんご存知だろう。では、年間どれだけの登山者が登頂しているかは、ご存知だろうか。1953年の初登頂以降、90年代までは年間登頂者数は100人に満たなかった。しかし、情報や登山道具の進化に伴い、近年はなんと年間に1,000人近い登山者が世界最高峰の頂を踏む時代になっている。
しかし、その大半はシェルパやガイドを伴い、酸素ボンベなどを使って初めて成功するもの。仲間。酸素。フィックスロープ。無線。使えるものが1つ減るごとに、登頂成功の確率は激減する。
そんななか、単独、無酸素、フィックスロープと無線なしで、しかも1週間で2度もエベレスト登頂を成し遂げた超人がいる。トレイルランの世界チャンピオン、キリアン・ジョルネである。
キリアンは「世界最高の山岳アスリート」として広くその名を知られ、過去15年以上に渡り、世界中のあらゆる大会を制し、山岳スキーとトレイルランニング競技を牽引してきた人物だ。すらりとしたスタイリッシュな見た目からは想像がつかないが、ピレネー山脈の山小屋で育ち、幼い頃から山を遊び場に育った生粋の山男である。
そんな彼が2017年に行ったチャレンジが、前述の条件で世界最高峰に登頂すること。この途方もない挑戦と当時の彼の心のうちの記録が、自叙伝『雲の上へ -6日間でエベレスト2度登頂の偉業への道-(エイアンドエフ刊)』として発売された。