東京2020オリンピック開催に合わせて行われたIOCの会議で、2026年イタリアで行われる冬季オリンピックの新種目が決った。それはSki Mountaineering、略してSKIMOスキーモ)と呼ばれる山岳スキー競技だ。日本ではなじみの薄いこのSKIMO、いったいどのような競技なのか詳しく説明していきたい。

 SKIMOはもともと山の中でSKIを使って長距離移動の速さを競う、ヨーロッパアルプス国境警備隊の訓練の一環として始まったと言われている。大戦後、国境警備の意味合いは次第に薄れ、訓練として行われていたものがスポーツとして競われるようになっていった。その中心はスイス、イタリア、フランスといったヨーロッパアルプスに隣接した国々だ。スキーでの登りと下りを繰り返し、定められたルートを移動する。やがて競技はヨーロッパの国々を中心に盛んに行われ、コースや規模も様々な大会が開催されていったが、もともと統一されたルールから始まったわけではない。やがて競技ルールや種目の定義を定める気運が高まり、2002年に最初の世界選手権が開催された。

 競技団体や関係者にとっては念願のオリンピック種目入りを果たしたSKIMOだが、当初からオリンピックを目指していた競技ではない。山の中で行ってきた競技故に、アルピニズムの精神があり、危険を伴う険しい山の中で競技を行うことにこだわってきた一面がある。過酷なコースで発揮される、アスリートたちの研ぎ澄まされた能力に「世界でもっともセクシーなスポーツ」という評価もある。

 しかし用具の進化、軽量化によるスピード化や、より安全に配慮したルール設定、オリンピックを意識した新しい種目の導入などにより、現在はスキー場ゲレンデを多く利用した大会運営になってきた。コース難易度の低下と反比例し、選手のレベルは洗練され高まっていった。元来のアルピニズムは陰を潜めたが、ギャラリーに見せる競技としての魅力はまさにオリンピック向きだ。

 現在、SKIMOの世界選手権やW-CUPでは5種目の競技が行われているが、最終的にオリンピック種目の候補となったのはインディビジュアル、スプリント、リレーの3種目。インディビジュアルはマラソンのようなマス・スタートで登りと滑りを繰り返し、距離で12kmほど、競技時間1時間強のコースで競うSKIMOの花形種目。スプリントはインディビジュアルの要素を短く凝縮させ、アップダウンを含む2分ほどの競技時間の種目だが、コースは主にスキー場ゲレンデ内。予選の後、ヒートレースで勝者を決める。リレーはスプリントに近いコースレイアウトで4人が一周ずつリレーして順位を決める、国別対抗レース。

 SKIMOはクロスカントリースキー的なスピーディーな動きで山を登り、アルペンスキーやフリーライドスキー的な技術を駆使して山を滑り降りる、総合的な要素を含んだスキー競技だ。その躍動感は見るものに感動を与える、インパクトの大きなオリンピック新種目といえるだろう。