長野県安曇野市に、万水川(よろずいがわ)という変わった名前の川がある。その小さな川を目指して、毎年全国から多くの川下りの人が訪れている。

  人気の理由は、短い距離の中に多くの魅力が凝縮されていること、そして夏でも釣り師を気にせずに快適に下れるという点だろう。難易度もそこまで高くないため、初心者のエントリーリバーとしてもおすすめだ。観光地の安曇野を流れているとあって、旅と絡めて気軽に楽しむには最高の川である。

■万水川と犀川とは

 信州・安曇野の盆地から湧き出た流れは、やがて南北双方からよろずの水を集め、万水川という一本の清流となって、犀川(さいがわ)へと注ぎ込む。万水川の総延長はわずか7.4kmで、その内の後半3kmの中に様々な魅力が詰まっており、非常に多彩な表情を見せてくれる。

 一方、その万水川が注ぎ込む犀川はというと、元は北アルプスの槍ヶ岳を端に発する梓川(あずさがわ・上高地を流れるあの川)で、やがて奈良井川と合流して、その名を犀川と変えたもの。その後、犀川は千曲川と合流し、新潟県に入ると信濃川と名を変え、遥か彼方の日本海へと注ぐ。

 まさに日本で一番長い、川の旅路のスタート地点のような場所なのである。

 それだけ海から遠いってこともあってか、鮎釣り師の姿はほぼ見かけない。そのため、夏でも気兼ねなく下れる数少ない川として人気を博している。