「無人地帯での遊び方」なるテーマを掲げた書籍が発売された。『“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社刊)と題されたその本は、書名の通り、人がいない場所をいかに探し出し、辿り着き、快適に過ごすか、その方法(遊び方)について書かれた特殊な1冊だ。
本連載の第6弾は、「調理術」のパートから食材選びとメニュー構成の考え方について、一部抜粋してお届けする。無人地帯における食事の役割は、腹を満たし、栄養を補給するだけに止まらない。いくつか実際の献立例を見ながら、考え方を紹介しよう。
■制限があるからこそ、食の質は重要
日々の暮らしよりも、アウトドア旅の食事は重要度が高まると考えるべきだ。
人力移動の旅では、衣食住の荷物すべてを背負う必要があるため、持ち歩ける食材の重さや量には限界がある。日数が延びるほど日持ちも考慮せねばならず、制限はさらに多くなる。
当然、途中で食材を買い足すことはできない。そう考えると、軽くて、日持ちが良く、腹にもたまるものが食材選びの中心となる。つまり、どうしてもアウトドア旅の食事は簡素で味気ないものになってしまいがちだ。
しかし、そのような状況においてこそ、食を充実させることは大切だ。食事が美味しければ、1日の楽しみが増え、気持ちが高まり、実際に体力も充実するだろう。仲間との旅ではもちろん、一人旅だったとしても食事は大切にしたい。
食事の時間は、腰を落ち着けて翌日の打合せをする重要な時間になる。焚き火を囲みながらお酒を酌み交わせば、仲間とさらに深い時間を共有することができる。