「無人地帯での遊び方」なるテーマを掲げた書籍が発売された。『“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社刊)と題されたその本は、書名の通り、人がいない場所をいかに探し出し、辿り着き、快適に過ごすか、その方法(遊び方)について書かれた特殊な1冊だ。

 本連載の第5弾は、「狩猟採集」についてパートから一部抜粋してお届けする。狩猟採集による食材の現地調達は、無人地帯における食料計画の重要なピース。自然界から採集をさせていただく前に、押さえておきたい基本的な考え方を紹介しよう。

『“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社刊)

■食材を調達して身軽になる

 人力で荷物を運ぶ無補給の旅を思い描いたとき、旅の長さは食料に左右される。衣食住のうち、衣と住の重さは変わらないが、旅が長くなるほど食料は重くなる。背負える食物の上限が、行動できる期間を決定づける。

 それなら、食物をすべて現地調達で賄えるようになったらどうだろう? 背負っている道具だけで、ずっと旅を続けられる。現実的にはすべての食料を採集で賄うことは難しいが、行動中に必要なエネルギー源やビタミン類を賄うのはそれほど難しくない。

 南西諸島か、初夏〜秋の南日本であれば(フィールドの生産力にもよるが)、旅の間に必要な動物性タンパク質のほとんどを魚や甲殻類から補給できる。また、道中で出合う山菜や野草は、傷みやすく重量もある生野菜の代わりとなる。

 採集技術を身につけ、可食、不食を判断できるようになるには、それなりの訓練を要するが、同じフィールドを繰り返し歩くうちに食べられる食物の知識は増え、食料計画に盛り込めるようになる。