■世俗を切り離し、自由への号砲を鳴らせ!
ジェット船乗り場である小川口には駐車場があり、広い川原もあるので野営前泊も可能。乗船チケットは近くにある瀞流荘(せいりゅうそう)で購入できる。川下り道具一式、野営道具一式、そして遊び道具を担いでジェット船へ乗り込む。軽装の観光客の中では明らかに浮いてしまうが、一方で謎の優越感も味わえてしまうのが不思議なところである。
ジェット船に揺られること約1時間でスタート地点の田戸に到着する。川下りの出発点になる瀞峡(田戸)は、三重、奈良、和歌山の3県のちょうど境目にあたる場所だ。そこから下流は“瀞八丁(どろはっちょう)”と呼ばれ、1.2kmにわたって独特な巨岩や奇岩が連続して展開している。日本とは思えないその光景は、まるでロード・オブ・ザ・リングの舞台として出てきそうな秘境感で、初めてこの地に立った時のワクワクとドキドキは今でも鮮明に覚えている。
田戸の乗船場の川原には観光客用の売店があり、そこで買ったビールをプシュッとやるのが僕にとっての旅の号砲となる。急ぐ旅ではないため、売店で買った鮎の塩焼きを食いながらのんびりしたり、周辺の廃集落跡を散策したり、山彦橋という吊り橋を渡ってスリルを楽んだりする。
ここで外せないのが、「瀞ホテル」の存在だ。断崖絶壁の場所に100年余りも立ち続ける名物ホテルで、現在は宿泊こそできないが、喫茶・食事や雑貨購入が楽しめる場所になっている。ここで瀞峡を眺めながらコーヒーを飲めば、旅としての味わいが増すことだろう。
次第に周りから観光客がいなくなると、「さて」といった感じでパックラフトを膨らませていく。この時のなんともいえない“世俗と切り離されていく感”が僕は大好きだ。ここから先は何をやってもやらなくても自分次第。誰にも文句はいわせないし管理もさせない。ヒリヒリするような自由な世界が待っているのだ。