昨年はコロナ禍の影響で入山禁止だった富士山。2021年この夏の営業はどうなるのだろうか? 山小屋の対応策や準備状況を調べてみた。

■混雑がクローズアップされてきた富士山の山小屋

富士山八合目太子舘

 富士山にいつかは登ってみたい、という日本人は多い。コロナ禍以前は海外からの人気も高く、登山期間(7月1日~9月上旬)が短いこともあり混みあってきた。特に人気の吉田ルート(富士吉田・河口湖からアクセス)では2019年、23万人の富士登山者のうち、吉田ルートは15万人の入山者が約2か月の間に山頂を目指した。私が富士吉田市の登山案内人として働いていた7年くらい前には、1日1万人登る日があったと記憶している。ここ数年は1日数千人程度の日が多いと聞くが、この夏の山小屋の受け入れ体制はどうなるのだろうか。

■「密」を回避するために

富士山八合目太子舘の寝床のパーテーションの一例

 私は中学生の時に母親と富士登山をしたことがある。どこの山小屋か忘れてしまったが、すし詰め状態だった。夜トイレへいったら、自分の寝るスペースが混みあい狭くなっていて戻るのに苦労した思い出がある。

 富士山八合目太子舘では、この夏、宿泊者の受け入れ人数が大きく変わる。定員350名から、210名の4割減へ。富士山の山小屋に泊まったことのない方に補足すると、男女混合の相部屋になっており、見知らぬ男女が隣同士にならないように配慮されている。それを個人ごとに間仕切りをつくり、1人1つの空間をつくる、というから大改革である。また、今年から個室も運用予定とのことだ。

■新しい換気システムの導入

富士山八合目太子舘では、顔周りの接触を減らすために、寝袋に装着する使い捨てのシーツを用意
富士山八合目太子舘内に設置した換気設備の稼働実験。煙幕後0秒(上)〜120秒後(下)

 他にも感染症対策として、寝袋の顔回りをカバーする使い捨てシーツや強力な換気システムが導入される。その換気の導入実験を見ると、2分半ほどで空気の入れ替えがされていることがわかる。いままで、外気温は低くても、山小屋の中は人が多いと暖かかった。外はダウンを着用して行動するような気温でも、小屋の中は薄い長袖シャツ1枚でも暑く感じる日もあったが、この強力な換気と、寝床のパーテーションで個人ごとに仕切られることを考えると、今までよりは寒くなるだろう。ダウンパンツなどの用意があるとよさそうだ。

■「Withコロナ時代の新しい登山マナー」を見てみよう

Withコロナ時代の新しい登山マナー

 Withコロナの富士登山はどう変わるのか、発表されたマナーの一覧を見てみると、日常生活でも気をつけていることの延長のように思う。ただ一つ、リストの6番にあるように、感染対策を行いながらの登山はいつもより時間がかかることは容易に想像できる。楽しい富士登山の思い出づくりには、時間に余裕をもった登山計画が今までよりもっと大事になるだろう。

Withコロナ時代の新しい登山マナー(富士登山オフィシャルサイト)
http://www.fujisan-climb.jp/info/20210316_withcoronaclibmmanner.html

 また、混雑を避けるためには、空いている日をねらうのが一番である。ぜひ、混雑を避けて予約をしてほしい。登山道も山小屋も空いているというだけで、快適な印象になるはずである。

混雑予想カレンダー(富士登山オフィシャルサイト)
http://www.fujisan-climb.jp/info/congestion_info.html

富士山八合目太子舘(個人のお客様のご予約受付は5月上旬に開始する予定)
https://www.mfi.or.jp/taisikan/index.html