■超先鋭的クライマー集団「ストーンマスターズ」のメンバーになる条件

先鋭的なクライミングに挑戦していた「ストーンマスターズ」のメンバーは、ファッションも揃って個性的だった

—当時、すでに「ストーンマスターズ(ヨセミテを拠点に、数々の初登ルートを開拓した伝説的なクライマー集団。マイクはその中心人物)」のメンバーたちとは、一緒に登っていたのですか。

 すでに何人かとは出会っていました。当時のヨセミテには同世代でハードなクライミングをするコアなグループがあって、彼らと一緒に登るようになって、よりお互いをプッシュするようになっていきました。あるとき、私たちは初めて登られてから、3年間誰にも登られていなかったスーサイドロックにある「ボホーラ」というルートに取り組んでいました。毎日ハードにトライし、一週間後には仲間が次々と登ることができて、そのときに「ここを登れたやつは『ストーンマスターズ』と名乗ることにしよう!」と決めたのです。コンセプトは私が作ったものですが、これはクラブのようなもので特にフォーマルな集まりではありません。

文字通り命懸けで岩を登った仲間は強い絆で結ばれていた

—つまり、そのルートが入団試験だったわけですね。どのようなメンバーが集まっていたのでしょう。

 ストーンマスターズの初期メンバーが誰か、って話はよく聞かれますが「俺はAチーム、お前はBチームだ」なんて言い合ったり、適当なものでしたよ。例のルートが登れて「俺もストーンマスターズだ」っていうやつがいれば、誰でもメンバーでした。コアなメンバーは6人くらいでしょうか。数年前に亡くなってしまったジム・ブリットウェル、ジョン・バーカー、ジョン・ロング、リン・ヒル、ロン・コーク……。定義は曖昧だったので、20人くらいはいたと思います。最初はエイドクライミング(登攀道具も使用する人工登攀)から始めて、そのルートをフリー化(登攀道具に頼らずに登ること。より難易度が高まる)するというのが、私たちの嗜好したスタイルでした。

岩壁を登るクライミングに対し、ボルダリングは大きな石を登るイメージ

—ストーンマスターズは、フリークライミングにばかり取り組んでいたわけではないのですね。

 エイドクライミングもしたし、ボルダリングもよくやりました。トレーニングの基本はやはりボルダリングです。体の動かし方を繰り返すことで、大きな壁でも必要な動きが自然と出せるようになるので、練習には最適なんです。道具に頼らないフリーというスタイルは、より難しい登り方を目指した結果、そうなっただけで。当時はヒッピーカルチャーのような、物質に頼らない自然回帰的な世の中の流れの影響も少なからずあったと思います。

<後編へ続く>

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