■「降雪機」とは原理がまったく異なる「造雪機」
一方、造雪機はベースエリアにあるプラントで氷を造る。そして、それを限りなく雪に近い形状に粉砕し、斜面の敷き詰めるというシステムだ。よく「アイスクラッシャー」といわれる。こちらは、夏にかき氷を造れるのと同じで、雪を造る(氷を砕く)ところまでは気温に左右されない。かき氷は常温でも一定時間は解けないように、造られた雪は氷点下でなくともしばらくは雪の体裁を保つのだ。
造雪機はいつでも雪をつくることができるため、スキー場オープンのための出足の確保には必須であり、またシーズン初頭の雪を安定的に得るために重宝される。気温がマイナスにならない状態で、雪がまったくないところにいきなり降雪機で雪を撒くことは、まずないためだ。
人工雪でオープンを迎えるスキー場は、オープン前にはだいたいこの写真(下)のような風景が見られる。プラントで氷を造り粉砕し雪状にする。それに日光や雨が当たる面積を小さくするため、まずは山状にして保存しておく。営業開始前に圧雪車で拡げて、コースに敷き詰める、というわけだ。
降雪機よりコストがはるかにかかるが、氷点下でなくとも造雪できるのが、造雪機の圧倒的な強みだ。
【造雪機】
・最初から雪状の氷を造るマシン
・気温に関係なく雪を造れる
・コストは降雪機より高くかかる
■降雪機&造雪機を造っているメーカーとは?
降雪機&造雪機は、欧米にそれぞれ大手メーカーがある。アメリカの代表格が’65年創業の「SMI」で、これまでの実に1万2000台以上のマシンを納入し、その9割が現役で稼働しているという。欧州メーカーでトップシェアを誇るのがイタリアの「テクノアルピン」だ。こちらは’90年に創業され、短期間で世界的なメーカーに急成長を遂げた。この2ブランドの日本国内での販売を行っているは、圧雪車やスノーモービルなども扱う「スノーシステムズ」社だ。
一方、日本でも独自の開発が続けられている。’78年に日本で初めて国産の造雪機・降雪機を製造し、以来、国産メーカーでダントツのシェアを誇るのが長野県の「樫山工業」。
’79年以降累計3,000台を納入。また、長野オリンピックをサポートした実績もある。ちなみに日本一早くオープンするスノータウンYetiにも、2番目に早くオープンする軽井沢プリンスホテルスキー場にも樫山工業の造雪機が導入されている。
樫山工業のスノーマシンのラインナップの中でも「KB-911」は、それまで前例のなかった様式の最強モデル。ディーゼルエンジンで自走し、外部からの電源供給は不要。水の供給のみで、雪造りをしたい場所で即雪造りができるというツワモノ。さらには、最大30度の斜面でも登り切るパワフルなエンジンと雪上用クローラを搭載。雪を降らせながらの走行もできるというから驚きだ。
■第三のカテゴリーも
紙おむつや生理用ナプキンなどの吸収体に用いられる「高吸水性高分子(吸収性ポリマー)」に水を含ませて凍らせた雪は、基本的に室内ゲレンデがホームグラウンド。その元祖的存在が、’90年代に営業されていた「スキーイング イン津田沼」だ。現在では各地の「スノーヴァ」で、この系統に属する人工雪が使用されている。
※後編へ続く
取材協力・写真提供/樫山工業株式会社、スノーシステムズ株式会社(五十音順)
文/ミゾロギ・ダイスケ
出典:2017 BRAVOSKI vol.2より再編集