近所から旅先まで、カメラを持って外へ出ると、いつもとは世界が違って見えたり、何気ない景色のなかに美しさを見つけられたりします。

 とはいえ、見慣れてしまった風景は、いつしかなんとなく眺めるだけになってしまうものです。自分にとって、夏の海もそんな風景のひとつで、そこに新たな発見があるとは思ってもいませんでした。

 しかし、ある船旅をきっかけに海の眺め方が大きく変わり、「海とは思えない風景」と出会うことになったのです。

◼️船旅をきっかけに変わった海の眺め方

船の航行で生まれた波の一瞬。同じ模様は二度と現れない

 船旅と聞いて思い浮かべる被写体は、水平線や飛び交う海鳥、白く塗装された船の構造物など、青と白を基調とした風景ではないでしょうか。ところが、太平洋を航行するフェリーに乗船したその日、最初に目を引いたのは、甲板からふと見下ろした海面そのものでした。

日本海で撮影した海面。天候や船の速度によって波の表情が変化する

 その海面には白く繊細な網目模様が絶え間なく現れ、一瞬たりとも同じ形を留めることなく、移ろい続けていました。自分はその華やかさに目を奪われ、気づけば何度もシャッターを切っていたのです。

 一方、佐渡島へ向かう旅では、太平洋とはまったく異なる表情の海に出会いました。船が港に近づくにつれ、夏空を映した海面が滑らかにゆらめき、静かな美しさを見せていました。

右の写真は、左の写真の中央部を拡大したもの。青い液体に白いインクを垂らしたかのようにみえる

 これらの船旅であらためて実感したのは、たとえ見慣れた風景でも、季節や天候、時間帯、眺める角度などが変わると、新鮮な表情に出会えるということでした。

 そして、ゆらめく海面の一瞬を写し止めた写真には、肉眼では捉えることのできない自然のかたちが写っていました。ただ、このときはまだ、撮影した写真のなかに「もうひとつの風景」が現れるとは知る由もなかったのです。