今年の夏も厳しい暑さが続いていますが、そんな時は山奥で滝の涼しさを全身で感じたくなるものです。日本の秘境100選にもなっている和歌山県古座川(こざがわ)の支流では、夏になるとハゼの仲間「ボウズハゼ」が滝を登る姿を見ることができます。その不思議な行動をこの目で確かめようと、古座川の清洌な流れを訪ねてみました。

■南紀熊野ジオパークの“クリスタルリバー”古座川の「滝の拝」

巨岩が迫る滝を、激しくしぶきを上げて水が流れ落ちていきます
岩には、奇妙な大きな穴がボコボコ開いていました

 古座川は、和歌山県南部を流れる川で、水質は川全域において環境省の定める最高基準を満たしていることから「平成の名水100選」にも指定されているほどの清流です。そのため、「クリスタルリバー」と呼ばれて注目されています。

 その古座川の支流である小川(こがわ)には、落差8mもの滝「滝の拝(たきのはい)」があります。一般的な滝というよりも、小さな峡谷に近い印象で、巨岩が迫る狭い場所を水が勢いよく流れ落ちています。

 周囲の岩には、大小さまざまな穴が無数に開いていて、不思議な自然美の世界が広がっています。これは、岩のくぼみにはまり込んだ小さな石が、川の流れによってくぼみを削ってできた穴で“おう穴(おうけつ)”と呼ばれています。

 これらの独特な景観は「南紀熊野ジオパーク」のジオサイトにもなっていて、多くの人々を楽しませています。

■滝の拝の人気者「ボウズハゼ」

丸い頭と吸盤状の口が特徴のボウズハゼ
滝の拝には、ボウズハゼの他にヨシノボリも生息しています

 ボウズハゼは、体長10cmほどのハゼの仲間です。丸くてつるっとした頭からその名がついています。川で産みつけられた卵からふ化した稚魚は海へ下り、数か月を過ごすようです。そして、初夏になると、川を遡上して上流へと向かいます。一見、アユと似た生活史ですが、大きな違いがあります。アユは春に遡上しますし、中流でとどまってなわばりを形成します。それに対し、ボウズハゼが餌を求めて遡上するのは夏。しかも小さな体で滝を越えてさらに上流まで進むのですから、その道中が厳しいものであることは容易に想像できます。

 滝の拝では、小さなボウズハゼが垂直の壁を登るところを間近で観察できることで有名で、毎年観察会が開かれるほどです。そこで、夏になるのを待って現地に向かってみました。