◼️ネパール語に見る、ネパール人の価値観

 ネパール語は、相手との関係性によって使う言葉が変わる。たとえば「あなた」という二人称ひとつとっても、目上には「タパーイン」、同年代なら「ティミー」、年下には「タン」と使い分ける。

 これまで何度もネパールを訪れていたが、そんな違いはまったく知らなかった。旅人向けのネパール語フレーズ集にも、載っているのは「タパーイン」くらいだ。

学校で使用している教科書。これまで知らなかったさまざまな文法が詳細に記載されている

 実際に暮らしてみると、この二人称にかぎらず、相手との距離感によって言葉が変わる場面に何度も出くわす。そこでふと、思った。なんだか、日本と似ているなと。

 日本語にも丁寧語や尊敬語、謙譲語があるのと同じように、相手や場面に応じて言葉を使いわける文化だ。ネパール語も同じように、言葉の中に人間関係が組み込まれている。

 そして、それは単に言葉が違うというだけではない。特に、目上の人に対して敬う文化が根付いているのだ。

 それを知ったとき、この国との距離がほんの少し縮まった気がした。

首都カトマンズの中心地。普通に暮らしていても目上の人への優しさを感じる機会がよくある

◼️まだ話せない。それでも話したい

 移住から半年が経った今、自分のネパール語習得における課題は、はっきりしている。リスニングだ。

 とにかく聞き取れない。だから最近は、意識的に会話の機会を増やしている。

家の近所の食堂。お店の人とも顔馴染みで、ここで会話の練習をしている

 ティーショップに行って、店の人に話しかける。飲み屋に行って、隣の人と話してみる。確実に経験値は上がってきた。とはいえ、まだ会話と呼べるレベルではない。

 どこに住んでいますか? 好きな食べ物はなんですか? 仕事はなんですか? 家族は何人いますか? 何歳ですか?

 自分が質問をして、答えをもらう。それで終わってしまうことが多い。

 そこから先に行きたい。他愛もない雑談をしたり、冗談を言い合ったり、そんなやりとりができるようになりたい。

 その人にまつわる定量的な情報ではなく、どんなことを思っていたり、なにを考えながら生きているのか。そういう感情や心の動きを理解したい。

 僕がネパール語を学ぶ理由は、きっとそこにあるのだと思う。

日常で出会うネパールのさまざまな人たちと、普通に会話ができるようになりたい