群馬県みなかみ町にある吾妻耶山(あずまやさん)は、標高1,341m。関東百名山・ぐんま百名山にも数えられ、谷川連峰を望むことができる山だ。今回は2025年2月下旬にガイドツアーに参加し、初めてスノーシューを履いて冬の山を歩いた体験をお伝えする。積雪の多かった地域ではまだまだ楽しめる、雪山でのアクティビティの参考になれば幸いだ。 

■スキー場の端から始まる雪の世界

 登山口となるのは、ノルンみなかみスキー場だ。ノルンみなかみスキー場の駐車場に車を停め、隣接するインフォメーションでリフト券を購入し、センターハウスで準備を整える。リフトは4基あり、第3リフトで標高を上げる。第3リフトの降り場は標高1,098mで、山頂(1,341m)までの標高差は約240m。降り場でスノーシューを装着し、ここから歩き始めた。

スキー場を離れ、静かな森の中へ入っていく

 ゲレンデの端を進むと、積雪は十分にあったが、スノーシューを履いているため沈み込みは足首までで済んだ。新雪を踏み込むたびに「ぎゅう」と小さな音が響く。先行者のトレースをなぞると歩きやすく、スノーシューひとつで雪の上を自由に進める感覚が新鮮だった。ゲレンデを離れるにつれて人の気配が遠のき、空気が静かになる。

■森に入ると、歩き方が変わる

 やがて森の中へ入る。踏み固められたゲレンデとは異なり、新雪の上では一歩ごとに踏み応えが変わる。スノーシューを履いていても、デッキ(板状部分)同士が重ならないよう足は平行にやや開いて歩くなど、足の運び方を意識する必要があった。

 登りではヒールリフターと呼ばれる踵を浮かせる機能を使うことで、斜面でも体重を預けやすく、初心者でも安定して登ることができた。

 見上げれば、枝に残る雪と澄んだ青空。音の少ない森では、自分の呼吸と足音だけがはっきりと感じられる。

■山頂で学ぶ雪山の知識

木々の間から望む冬の谷川連峰

 約1時間半歩き、山頂に到着した。木々の間から、白く染まった谷川連峰や至仏山(しぶつさん)を望むことができた。ひと息ついたところで、ガイドがカップラーメンを用意してくれた。顔を近づけると湯気が頬に触れ、手に持ったカップから冷えた指先へ温かさが伝わる。ほっとする瞬間だった。

ガイドがプローブで積雪を測りながら雪庇を解説

 温かいラーメンを口にしながら、雪庇(せっぴ)について講習を受ける。風の流れでできる雪の張り出しは、自重や衝撃で突然崩落することもあり、見た目以上に危険を伴う。プローブで積雪を測りながらの説明は、ツアーならではの学びだった。

山頂の祠に吹き付けた雪をたとえに、雪庇の仕組みを解説してもらった

■下りで実感するスノーシューの安心感

静かな森の一本道を歩く

 下山では、スノーシューの爪が雪をしっかりと捉え、斜面が急な場所でも不安は少ない。滑るのではなく、踏みしめて降りる感覚だ。

 午後になるにつれ、日の当たらない樹林帯では、ふかふかだった雪面がやや締まり、足裏に伝わる踏み応えも変わってきた。変わらず静かな森の中では、鳥のさえずりと雪を踏む音だけが響いていた。リフトが近づくにつれ現実へ戻る感覚と、無事に歩き切れた安堵を覚えた。

 森の一本道の途中、リフト下をくぐる場所にあった大きな段差で、著者は踏み抜きのように足が深くはまり、足を取られてしまった。自力で抜け出せずガイドに助けてもらい、同行している安心感をあらためて実感した。 

 初めてのスノーシュー体験で印象に残ったのは、絶景よりも歩く感覚そのものだった。静かな冬の森を、自分の足で確かめながら進む時間。適切な装備と知識、そして同行してくれた登山ガイドの存在のおかげで、雪山が思っていたよりもずっと身近な存在になった。春から秋の登山とはまた違った感覚に、山を歩く充実感を味わえた吾妻耶山でのツアーは、その入口としてちょうどいいと感じた。

■今回案内してくれたガイドさん

 今回案内してくれたのは、山梨を拠点に活動する登山ガイドの今村量紀(いまむらかずき)さんだ。雪山を含む幅広い山域でツアーを行っている。

 今回のツアーは、実はもともとは谷川岳で滑落停止訓練のツアーに参加する予定だったのだが、雪の影響でロープウェイが臨時休業となり、急遽スノーシューでの吾妻耶山歩きへと変更になったもの。

 その日の条件に合わせて山を選び直し、初心者でも安全に楽しめるコースを提案してくれたことも印象に残っている。装備の扱い方や雪山での注意点を丁寧に説明してくれたおかげで、不安なく冬の山歩きを体験することができた。

 詳細は今村ガイドの公式サイト「yamatanosi.com」で確認できる。  

 

【ノルン水上スキー場から吾妻耶山往復コース】所要時間
ノルン水上スキー場 第3リフト降り場 (0:00))→ 吾妻耶山 (1:17)→ ノルン水上スキー場 (3:30)
歩行距離:約5.5km
累積標高差:登り 327m、下り 582m
合計所要時間:3時間30分

●【MAP】吾妻耶山

ノルンみなかみスキー場
住所:〒379-1614  群馬県利根郡みなかみ町寺間479-139
TEL:0278-72-6688

【交通アクセス】
電車:上越線水上駅・上牧駅、上越新幹線上毛高原駅より無料シャトルバス
車:関越自動車道・水上ICから約5分

ホームページURL http://www.norn.co.jp

※営業日時はホームページよりご確認ください

●【MAP】ノルンみなかみスキー場

※この記事の情報は2026年2月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。