アウトドアサウナの理想郷「THE WATERS」を作る。その歩みを振り返ると、ツリーテラスをつくり、環境土木で動線をひらき、愛農かまどを積み、和せいろや箱蒸し風呂までつくるなど、村づくりイベントを重ねながら、THE WATERSは少しずつ「場所」になっていった。
といっても、まだサウナ村とは呼べない。呼べるのはせいぜい「気配」だ。人が集まり、汗をかき、笑い、手を動かし、「また来ます」と言って帰っていく。その往復運動の中で、開拓村民(関係人口)だけが、確実に増えていった。
今回は、その先の話。プレオープンを目指して、まずは「最低限、サウナができる状態」まで持っていく。そんな突貫工事の日々を振り返る。
■記録的大雪、そして現実に引き戻される
2025年2月7日から8日にかけて、岐阜県全体が記録的な大雪に見舞われた。
THE WATERSのある山県市神崎・円原地区も例外ではない。長時間の停電。集落の孤立。地元の人たちが、「何十年ぶりだ」と口を揃えるほどの雪だ。
僕自身、しばらく現場に入ることすらできなかった。
数日後、ようやく雪をかき分けてツリーテラスに辿り着いたとき、言葉を失った。補強前だったツリーテラスは、50cmほど積もって固まった雪の重みで傾いていた。この時の悲壮感はなかなかのものだった。
そこからは、有志総出の雪かき。テラスを掘り起こし、ジャッキで持ち上げ、ミリ単位で水平を取り直し、補強の柱を一本ずつ入れていく。時間も、体力も、そして、お金も削られた。正直、この頃の精神状態は、かなり追い詰められていたと思う。
まだサウナはない。プレオープンの目処も立たない。それでも時間だけは、容赦なく進んでいく。そんな窮地を救ってくれたのは、やっぱり、これまで一緒に村づくりをしてきた仲間たちだった。
「行きますよ」
「手伝います」
「今週末、空けときます」
その一言一言が、どれだけ沁みたか。