広島県・廿日市市(はつかいちし)北部の山あいにある、小さなログハウス。筆者は現在、市街地の自宅とこのログハウスを行き来する2拠点生活を送っており、休日やテレワークが可能な日は、自然に囲まれたこの場所で過ごすことが多い。

 今回はそんなログハウスでの暮らしのなかで、長年通い続けてくれる“家族”のような存在の野鳥を紹介したい。黒い帽子のような頭、丸刈りのイタズラっ子のような愛くるしい顔立ちのヤマガラだ。

■森の住人との出会い

ヤマガラとの心温まるストーリーは2022年の春から始まった

 2022年の春。自然の中で暮らす時間を楽しむうちに、「野鳥がやってこないかな。友達になりたいな」と思い、ウッドデッキの端に餌サーバーを置いたのが森の住人との出会いの始まり。

 ほどなくして現れたヤマガラは、最初はおそるおそる、枝からこちらの様子をうかがいながら、ひまわりの種をついばんでいく。それでも何度も来るうちに、人の存在に慣れたのか、やがて姿を見せると筆者が声をかける前に「ツイー」と鳴くようになった。

黒い帽子をちょこんと乗せた、イタズラっ子のようなヤマガラの表情

 ヤマガラやシジュウカラなど「◯◯ガラ」と名のつく小鳥たちは、漢字で書くと「雀」。その名の通り、スズメの仲間で、里山ならどこにでもいる身近な野鳥だ。

 なかでもヤマガラは昔から人懐こいことで知られ、かつて縁日では占い鳥として芸を見せていた歴史もある(現在は法改正で禁止)。今でも人との距離が近く、個体によっては手からエサを受け取るほどに慣れることもある。

透き通る羽が美しいヤマガラ

 筆者のログハウスにも、季節を越えて何羽ものヤマガラが訪れるようになった。ときには一羽がエサをくわえて飛び去り、しばらくして別の個体がやってくることも。餌場の順番待ちで枝に並んだり、ちょっかいを出し合って追い払ったり。どこか人間のような関係性が垣間見える。

ヤマガラは「ツイー、ツイー」と鳴いてやって来たことを知らせてくれる

 翌春、ログハウスの軒下に巣箱を設置したところ、なんとヤマガラが営巣。そこからそっと見守る日々が始まった。巣箱の出入り口には木の皮や草などが運び込まれ、やがてヒナの鳴き声が聞こえるように。

巣づくりに励むヤマガラの親鳥

 親鳥は非常に警戒心が強く、巣箱の中にヒナがいるあいだは、まるで見張りをするように慎重に出入りしていた。特に夕方になると、巣箱の入り口からそっと顔だけを出し、あたりをうかがうような仕草がなんともかわいらしかった。

イタズラっ子のようだが、立派な親鳥

 無事にヒナたちは巣立ち、それぞれの空へと飛び立っていった。その後も、ひょっこりと顔を出す姿があり、「もしかしてあの時のヒナが戻ってきたのかな?」と想像することもある。鳥に名札はついていないけれど、模様、声やしぐさ、鳴き方には個性があり、あいさつのように返してくれる鳴き声に、胸があたたかくなる。

巣立ちまもない、名付けて「ミニガラ」

 森の中を歩いていると、「ツイー、ツイー」とヤマガラの声が聞こえることがある。そんなとき、同じ回数だけ「ツイー、ツイー」と返してみる。すると、再び「ツイー」と声が返ってくることがある。まるで会話をしているかのようで、思わず笑ってしまう。

 初めて訪れた山でも同じような反応があるから、不思議だ。いや、もしかすると本当に会話になっているのかもしれない。

 今では、車でログハウスに到着するとすぐ、どこからともなく「ツイー!」と声が聞こえてくることがある。あるいは、車を降りると同時に、ウッドデッキの柵にちょこんと止まってこちらを見ていることも。まるで「おはよう、今日も来たね」と言ってくれているようで、こちらも「おはよう」とあいさつをする。

ときには2羽で。親子かな?

 筆者はヤマガラたちを飼っているわけではない。しかし、自然の中で過ごす時間のなかで、心が通じ合うような瞬間が確かにある。そんな存在は、もはや“家族の一員”のようなものだ。森の豊かさとともに、ヤマガラたちはこの場所を訪れる筆者や家族、友人たちに、たくさんの癒しを与えてくれる。

 こうした小さなつながりが生まれるのも、里山で暮らしているからこそ。人の営みと自然との距離が近いこの場所では、野鳥や動物たちが当たり前のように日常に入り込み、共に過ごす感覚がある。都市では味わえない“気配のある暮らし”が、ここにはあるのだ。