登山を楽しむためには、快適な服装選びが重要です。身体を快適に保つことは、安全にもつながります。特に初心者の方にとっては、何をどう準備すればよいか迷うことも多いでしょう。
本記事では、登山の服装の基本であるレイヤリング(重ね着)の考え方を中心に、季節ごとに適したアイテムの選び方を解説します。
初心者でも安心して山登りを楽しめるよう、実用的でわかりやすいポイントをお伝えします。これから登山を始めたい方や、服装選びに悩んでいる方はぜひ参考にしてください!
■登山の服装は初心者でも専用アイテムが必要?

「登山を始めたばかりの初心者でも、専用のウェアは必要?」
「普段着やジャージでもいいの?」
本章では山のレベルに応じた服装選びや、登山にNGな服装などを紹介します。
安全で快適な登山を楽しむために、さっそく確認しましょう。
●登山初心者なら普段着やジャージでもOK?
登山初心者だからこそ、登山用に作られたアイテムを選ぶのがおすすめです。普段着やジャージでは対応しきれないことも多いため、快適で安全な登山のためには、専用ウェアが重要です。
ただし、すべてを一度に揃えるのは難しい場合もあるでしょう。その場合は、まず肌に直接触れるベースレイヤーから揃えるのがおすすめです。
ベースレイヤーは汗を素早く吸収・乾燥させる役割があり、何を選ぶかで登山中の快適さを大きく左右します。
少しずつ揃えて、登山を安全に楽しみましょう。
●登山の服装のNG例
登山でNGな服装の例を紹介します。
特に気をつけたいのは綿素材の服装です。綿は、雨や汗などの水分を吸収しやすく、乾きにくいという特徴があります。濡れた衣服は体を冷やすリスクがあるため、登山には適していません。
また、ジーンズはアウトドアのイメージがありますが、登山では動きが制限されるため、避けたい服装です。
乾きづらく、動きにくい服装はNGです。山の天気は変わりやすく急変することもあるため、防水性や透湿性のあるレインウェアは必ず持参しましょう。
●登る山の季節や標高に応じた服装を選ぼう
登山を楽しむためには、登る山の季節や標高に合わせた服装選びが大切です。
自然を満喫するハイキングコースや険しい道が続く山など、難易度に合わせた服装をすることが快適な登山のための重要ポイントといえるでしょう。
例:高尾山の登山の服装
高尾山は、ケーブルカーやリフトで昇ることもできるため、気軽に登れる山として初心者にも人気で、ほとんどが舗装されているコースもあります。
高尾山のような山の場合、コースにもよりますが動きやすい服装と軽いトレッキングまで対応した靴で出かければ、山歩きを十分に楽しめるでしょう。
例:富士山の登山の服装
富士山のように3,000m以上もある本格的な登山の場合、しっかりとした服装選びが欠かせません。
季節や気候に応じて服を選ぶことはもちろんですが、山は標高が高くなるにつれて気温が下がります。登山を安全に楽しむためには、体温調節できる服装選びが必須です。
■登山の服装はレイヤリング(重ね着)が基本

登山の服装は、レイヤリング(重ね着)が基本です。
山の天候は変わりやすく、登るにつれて気温も下がっていくためレイヤリング(重ね着)で体温や発汗による湿気の調節をすることがとても大切です。
●気温や体温に応じて着脱しやすい服装が理想
快適に登山を楽しむためには、“体温調節”が欠かせません。山の天気は急変しやすく、突然の雨に見舞われることもあります。また、標高が上がるにつれて気温が下がり、風が強まるなど環境が大きく変化することも。さらに、長時間の運動によって体温も上下するため、適切な調節が重要です。
こうした環境では、さっと羽織れる服があれば体の冷えを防ぎ、汗ばむときには簡単に脱ぎやすい服が便利です。このように、素早く体温調節ができる着脱のしやすさが重要であり、レイヤリング(重ね着)はその理想的な方法といえます。
●基本的な3層のレイヤリング(重ね着)
レイヤリングでは、ただ服を重ねて着るのではなく、役割が異なる3つのウェアを組み合わせて着るのが基本です。
この3つのウェアは、肌に近いところから順に「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウターレイヤー」と呼ばれます。
それぞれのレイヤーは、速乾性、保温性、防風・防水性など、異なる機能と役割を持っており、快適さと安全性を支えています。
レイヤリング(重ね着)は、それぞれのウェアの機能性を知り、役割を活かすように着用することが大切です。山の環境や体調に応じて脱ぎ着することで、衣服内の快適さを常に保つことができるのです。
■登山の服装の選び方|レイヤーごとの役割や、素材による機能性

登山を楽しむには、服装の選び方が重要な鍵となります。
本章では、レイヤリングを上手に取り入れるために、レイヤーごとの役割や、素材による機能性の違いについて紹介します。
それぞれのアイテムについて特徴を知ることで、レイヤリングを活かした服装を揃えることができるでしょう。
●ベースレイヤー:吸水・速乾性&保温で体を冷えから守る
ベースレイヤーとは、肌に直接触れるウェア(インナー)のことです。
汗を吸収する吸水性、素早く乾かす速乾性を兼ね備え、肌をドライに保ちます。また、衣服の濡れで感じる不快感を減らし、体の冷えを防ぎます。
ベースレイヤーの素材におすすめなのは、化学繊維、ウール、または化学繊維とウールを混紡したウェアです。
化学繊維は速乾性、ウールは保温性と吸湿性に優れているのが特徴で、どちらも体を冷えから守ってくれます。
●ミドルレイヤー:保温性・汗処理機能・ストレッチ性がカギ
ミドルレイヤーは、3層の重ね着のうち中間に着るものを指し、ベースレイヤーのすぐ上に着用します。
通気性と保温性を兼ね備えることで汗を素早く蒸発させ、汗や寒さによる体の冷えを防ぎます。
ミドルレイヤーに適しているウェアは、フリース、中綿が入ったインサレーション、ストレッチ性に優れたソフトシェルなどさまざま。
季節に応じたミドルレイヤーを選ぶことが、登山を楽しむポイントです。
サーマルレイヤー:温かい空気の層を作り出す
サーマルレイヤーはミドルレイヤーの一種で、保温性のあるミドルレイヤーのことをサーマルレイヤーと呼びます。サーマルレイヤーを取り入れることで、体温を保つための温かい空気の層が作れるため、とくに気温の低い山において重要な役割を果たします。
フリースやコンパクトに収納できるダウンが適しており、選ぶ際には保温性と通気性に優れたものがおすすめです。
●アウターレイヤー:防水、防風、保温で身を守る
アウターレイヤーは、いちばん外側に着用する上着です。
風雨や雪などから体を守るため、防水性や防風性などが備わっています。
悪天候時でも対応できる機能性が求められ、防水性に優れたレインウェア、防風性や撥水性に優れたウィンドジャケットなどがアウターレイヤーに分類されます。
●ボトムスのレイヤリング
ボトムスも、気温や天候に合わせてレイヤリング(重ね着)や脱ぎ着をすることが大切で、トップスと同じように3層のレイヤリング(重ね着)が基本となります。
肌に触れるベースレイヤー(インナー)は、速乾性、吸湿性に優れているため汗冷えを防ぎます。レギンスやトレッキングパンツがミドルレイヤーに当たり、保温性や吸水速乾性に優れています。ボトムスのアウターレイヤーは、雨や風などから体を守るレインパンツやシェルパンツを着用します。
■登山の服装・コーディネート例【季節別】

快適な登山のためには、季節に合わせて服装をコーディネートすることが大事なポイントです。
季節別に服装を整える際も、レイヤリング(重ね着)が基本となります。
日帰り登山を楽しむ時の、季節ごとのコーディネート例を紹介しましょう。
●春の登山の服装

春は新緑が美しく、山歩きには最高の季節です。しかし、春の天気は変わりやすく、麓と山頂の気温差が大きいのが特徴です。
春の登山には、天候や気温の急な変化に対応するため、防風・防水機能に優れたアウタージャケットが欠かせません。
ミドルレイヤーには、保温性と通気性を兼ね備えながらも薄くて軽量なフリースやジャケットが最適です。
ボトムスは、冬用ほどの保温性は必要なく、歩きやすさや通気性などを重視しましょう。
●夏の登山の服装

夏は本格的な登山のシーズン。しかし、紫外線も強く虫刺されなどのリスクもあるため、肌の露出を抑えたコーディネートを心がけましょう。
上半身は、吸汗速乾性に優れた半袖のシャツと薄手で長袖のジャケット。
ボトムスには、通気性に優れたロングパンツ、または、ショートパンツと夏用のトレッキングタイツの組み合わせもおすすめです。
●秋の登山の服装

秋は、紅葉の美しさを求めて多くの方が登山やハイキングに訪れる季節です。
気温差が大きい秋は、特にレイヤリング(重ね着)に気を配りましょう。
汗で濡れた服は体を冷やしてしまうため、ベースレイヤーには吸水速乾性のあるアイテムが必須です。
ミドルレイヤーには、ベースレイヤーから伝わる汗を拡散して通気性に優れるフリースや化繊のものを選びましょう。
いちばん外側に着るアウターレイヤーは、防風性、保温性、ストレッチ性を兼ね備えたソフトシェルなどが適しています。
●冬の登山の服装

冬は、天気のいい日の低山でも日かげになると空気が冷たく感じます。
そのため、冬の登山では防寒対策が服装選びのポイントです。
ベースレイヤー、ミドルレイヤーに保温性のあるものを、アウターレイヤーとボトムスは、防風性が高い商品を選ぶのが大切です。
また、冬のアイテムはどうしてもかさばりがちなため、なるべくコンパクトで軽量なものを選びましょう。
■登山の服装に関するそのほかのアイテム

登山を安全に楽しむためのコーディネートには、服装以外にも欠かせないアイテムがあります。
必需品から忘れがちなアイテムまで紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。
●登山靴 :足への負担を軽減し安全を確保!
登山に欠かせないのが、専用の登山靴(トレッキングシューズ)です。
普通のスニーカーと比べて、足周りを保護し、不整地でも歩きやすくて滑りにくいのが特徴で、防水性、耐久性などさまざまな機能性に優れ、足への負担が軽減されます。
山を歩くための靴は、街で履く靴以上に自分の足に合う形状の靴を選ぶことが重要になります。
●バックパック:ひとまとめにできる機能性が便利
登山に必要な水筒やタオル、食べ物などを、まとめて持ち運べるバックパックは、登山靴と並んで必須のアイテムです。
タウンユースのものと比べて、登山用のバックパックはフィット感に優れており、重い荷物を背負って山道を歩く際、荷重を分散させ体への負担が軽減されるように作られています。
また、背中や肩など体にあたる部分の通気性に優れ、軽量に作られているのが特徴です。自分に合う機能やフィッティングを考慮に入れて選びましょう。
●登山用帽子:紫外線&気温対策に必須
登山の際の帽子は紫外線対策や、暑さ・寒さ対策に役に立ちます。
登山用の帽子は、主にキャップ型、ハット型、ニット帽の3種類。キャップ型は視界確保のしやすさ、ハット型は紫外線対策に優れています。また、ニット帽は防寒対策に適しています。
帽子は、吸汗速乾性、撥水性、UVカットなどの機能性、素材やサイズ感などを確かめ、季節や天候に合わせて選ぶことがポイントです。
●登山用グローブ:紫外線や怪我から手を守る
グローブは、手を怪我から守るだけではなく、雨や雪による冷え防止、岩場での滑り止め、日焼け防止にも役立つ便利なアイテムです。
登山用グローブには様々な種類があります。なかでも、指先が自由になるフィンガーレスグローブは、岩が掴みやすいのが特徴。カメラやスマートフォンの操作、靴ひもを結び直すなど、細かい作業にも適しています。
また、UVカットや中綿入りのグローブなどもあり、登山スタイルや季節によって選ぶのがポイントです。
●サングラス:目の保護と視界確保がかなう
サングラスをかけることで、紫外線による目のダメージを軽減できます。また、土埃や虫、木の枝などから目を保護したり、眩しさを軽減することで足元を見えやすくするなど、登山中のトラブル防止に役立ちます。
サングラスを選ぶには、UVカット率、フィット感や軽さなども大事なポイントとなります。
■【Q&A】登山の服装に関連する質問

登山初心者の方にとって、服装の悩みは最初に直面しやすい課題ではないでしょうか。本章では、そんな悩みにお答えします。
登山する際の服装のマナーや、あると便利なアイテムなどしっかり確認しておきましょう。
Q. 登山の服装にルールやマナーはある?
安全な登山を楽しむために、服装に気をつけることはとても大切です。
必ずレイヤリングを考えた服装と専用の登山靴で出かけましょう。
また、レインウェア、帽子、手袋など最低限のアイテムを用意し、季節や天候、山の状況に応じた格好を整えることが大事なルールです。肌の露出は避け、直射日光や害虫などの外敵から身を守りましょう。
Q. 登山ウェアはユニクロやワークマンでも揃えられる?
最近では、ユニクロやワークマンでも、登山に使えるインナーやアウターなどを揃えることができます。低山や日帰りで出かける気軽なハイキングなどであれば、問題はないでしょう。ワークマンでは登山靴やバックパックの取り扱いもあります。使い方次第では十分ですが、必要な機能を十分に備えた登山靴やバックパック、サングラスも検討するようにしましょう。
Q. 登山の服装以外であると便利なアイテムは?
服装以外で用意したい登山の便利なアイテムは、おもに以下の5つです。
- 水(水分補給に)
- タオル(汗や水拭きに)
- ゴミ袋(ゴミの持ち帰り用に)
- 行動食(疲労回復、非常用に)
- ヘッドライト(暗い道や緊急時の照明に)
- スマートフォン
- 地図
上記のほかにも、モバイルバッテリーや虫除けスプレー、また、絆創膏や応急処置のできる救急セットなども揃えておくと安心でしょう。
■登山の服装は機能性だけでなくおしゃれも楽しんで!
山登りを安全に楽しむために、機能性に優れたウェアと専用のアイテム選びは欠かせません。
しかし、コーディネートを自分好みに整えることで、さらに山登りが楽しくなり「また出かけよう!」という気持ちも高まるでしょう。
ぜひ、機能性とおしゃれを兼ね備えた自分好みのコーデを見つけてください。