山と海に囲まれて、一歩アウトドアに踏み出せば動物との出合いも多い日本。鳥や魚、イノシシにサル、そしてシカやクマも身近な里山で見られます。そのほとんどが予期せぬ体験で、貴重な思い出となっている人も多いのではないでしょうか?

 そんな体験を通して密かに芽生えたアナタの“野生動物への興味”を、さらに刺激しちゃうかもしれない!?  生き物のちょっと変わった生態や、不思議に思える行動などにグッと迫ってみよう、という本シリーズ。

 今回は「長崎ペンギン水族館」を訪問し、小さくて人気のあるコガタペンギンの意外なエピソードをレポートします。教えていただいたのは、飼育展示課 ペンギン担当・山口あゆ美さんです。

■小さい子どもから、子どものペンギンと言われることも

 コガタペンギンは世界最小のペンギンであり、フェアリーペンギンとも呼ばれています。体重は成長しても1kg程度で、体長は30~40cm程度だそうです。

 「手に乗せられるくらいの大きさです。キングペンギンが10kg程度ですから、10分の1くらいですね。勘違いして『子どものペンギンがいるよ』と、親御さんに言っているお子さんもよくいます」(山口さん)。

 コガタペンギンは背中が光沢のある濃い青色でお腹が白という、いたってシンプルな色をしていて、やや前傾姿勢で歩いているのをよく見かけます。他のペンギンと比べると、一般的な鳥に近い見た目をしています。

 「骨格的に前傾姿勢となりやすいのでしょう。ただし、他のペンギンも実は前傾姿勢をとることがよくあるんです。だから、コガタペンギンだけの特性というわけではないですね」(山口さん)。

小型だけれど顔は凛々しい

■まるで猫? 人間の生活圏内で暮らすことも多い

 コガタペンギンはオーストラリアなどに生息しています。基本的には海岸近くの草むらなどに住んでいますが、家の縁の下などに巣を作ることもあります。

 「人の生活圏と非常に近い場所に住んでいるペンギンです。道を歩いていることがあるそうで、現地の人にとっては、私たちにとっての猫くらいのイメージかもしれないですね」(山口さん)。

 氷の上で暮らすペンギンを想像していると、人間の家の近くで暮らしている姿がなんとも不思議な気がします。それにしても、身近な場所でペンギンに会えるなんて、オーストラリアの人がうらやましくなってきますね。

オーストラリアの看板

■フェアリーかと思ったら…… がっつり食べて性格は攻撃的

 とても小さいコガタペンギンですが、意外な姿もあるそうです。

 「実は大食漢なんです。水族館では真アジやキビナゴを餌としていますが、体重の10%程度の量を1回の給餌で食べます。ただ、すごく神経質で、何かあると餌を置いてさっと逃げていきます」(山口さん)。

 また、攻撃的な一面もあり、巣に近づいてしまうと嚙まれたり、フリッパーと呼ばれる翼で叩かれたりするそうです。もっとも、体が小さいうえ、彼らが住んでいるオーストラリアにはアザラシやネコ、イヌなどの天敵が多くいるため、神経質かつ攻撃的になったのは当然なのでしょう。

攻撃的な一面もあるコガタペンギン