河口湖の東側に位置し、訪日外国人にも人気が高い観光スポット、天上山(てんじょうさん・標高1,104m)。人気の理由は、富士山パノラマロープウェイなら3分で山頂直下の富士見台まで到達可能というアクセスのよさと、富士山をはじめ富士の樹海や南アルプスまで見渡せる展望のよさだ。

 また、天上山は意地悪なたぬきを、うさぎたちが協力して懲らしめる童話「カチカチ山」の舞台としても知られている。「カチカチ山」は太宰治(だざいおさむ)の小説「お伽草子(おとぎそうし)」に収録されている短編だ。太宰が心身の不調を癒すために滞在していた河口湖周辺の旅籠屋(はたごや)での体験に基づいて書かれたもので、天上山が舞台とされている。

 ロープウェイ山頂にあたる富士見台駅には、「カチカチ山」になぞらえた昔ながらの建築物や、作中に登場するたぬきとうさぎをモチーフにした茶屋や神社があり、観光客を楽しませてくれる。 

 今回筆者は、ロープウェイを利用せずに、「あじさいハイキングコース」を使って天上山を目指すコースを歩いた。春は桜、夏はアジサイが道中に咲き誇り、秋には紅葉を楽しめるコースだが、冬の時期にも静かな山歩きが楽しめ、澄んだ空気の中、真っ白に冠雪した富士山が眺められる、魅力あふれるコースだ。

■河口湖畔の「船津浜駐車場」から天上山ハイキング!

ロープウェイを使わず天上山を目指すコース(国土地理院地図より引用)

●船津浜駐車場へのアクセス方法 

 河口湖畔に位置していて、遊覧船乗り場もある船津浜(ふなつはま)駐車場。約250台分のスペースがあり無料で利用できる。周辺には飲食店や土産店、ホテルなどが立ち並ぶ、河口湖観光の中心地だ。

 船津浜駐車場までのアクセスは、中央自動車道・河口湖ICから約4km、15分程度。また、富士急行線・河口湖駅からも900m、徒歩約15分という利便性の高さもあって、インバウンドの観光客で連日賑わっている。

【船津浜駐車場から天上山ピストンコース】所要時間
船津浜駐車場 (0:00)→ 天上山護国神社 (0:20) →太宰治記念碑 (0:35) → 富士見台・ロープウェイ富士見(0:50) → 天上山山頂 (1:00)→富士見台(1:10)→船津浜駐車場(1:50)
歩行距離:約3.0km
累積標高差:登り 305m、下り305m
合計所要時間:1時間50分

■冬でも歩きやすい! わずか1時間で河口湖と富士山の大展望!「天上山」ハイキングコース!

富士五湖でも高い人気の河口湖。手漕ぎボートにスワンボート、遊覧船も運行している

●船津浜駐車場から「あじさいハイキングコース」で富士見台へ!

 船津浜駐車場で準備を整えたら、商店街を抜けて、天上山護国(ごこく)神社に向かう。護国神社からは、天上山中腹の富士見台を経て山頂へとつながる「あじさいハイキングコース」を進む。

 本コースはその名の通り、10万株ものあじさいが咲く人気コースで、7月から8月初頭にかけて見頃を迎える。その他の季節にも、桜や紅葉、真っ白に冠雪した富士山が見られる。

 序盤はきれいな石畳の登山道で、手すりやベンチもあってとても歩きやすい。徐々に樹林帯へと入っていくが、整備が行き届いており、木の根でつまずく心配もないほどなだらかな道だ。傾斜もゆるやかなので、地元の方の散策スポットとしても利用されているようだ。

 駐車場を出発して30〜40分ほどで、休憩にちょうどいい東屋が見えてくる。広場に置かれた石碑には、カチカチ山の作中に登場するセリフ「惚れちゃ悪いか」が太宰治直筆の字体で刻まれている。ロープウェイで通り過ぎてしまうにはもったいない、美しい富士山が見られるポイントだ。

 小休止を挟んでからおよそ15分。ロープウェイの駅が見えてくると同時に、段々と賑やかな声が聞こえてくる。ロープウェイ発着駅の富士見台に到着だ。